これぞ4番だ。阪神大山悠輔内野手(27)がチームの連敗を4で止める先制決勝の3号2ランを放った。初回にヤクルト先発高梨のフォークを左中間席へ。4番今季8試合目の1発が沈むベンチを盛り上げ、10安打6得点の快勝を呼び込んだ。3番佐藤輝も初回に二塁打でお膳立てするなど中押し適時打を含むマルチ安打。新3、4番の活躍で今季12戦全敗だったビジター初勝利。さあ4月反攻だ。

神宮の空はまだ明るかった。午後6時を過ぎたばかり。ホームベースの先では笑顔の佐藤輝が待っていた。大山は背番号8と喜びを分かち合うと、ナインが歓喜するベンチ前に駆けた。

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大山 いやもう、しっかり打つだけ、それしかない。結果的にホームランで2点。先制点を取れてよかったと思いますし、結果が出てよかったです。

3番佐藤輝、4番大山。昨年この並びはなく、初めて組んだ前日はともに無安打だった新中軸の2試合目。左右の主砲が初回に奮起した。井上ヘッドに「チャッカマン」を期待される佐藤輝が2死から二塁打でお膳立て。大山は高梨の高めフォークを左中間に運んだ。今季8試合目で4番初アーチとなる3号2ラン。「出て、かえして、粘って。そういった攻撃がどんどん線になってくる」。つながりを取り戻しつつある打線に、何度もうなずいた。

「刺激というか、うれしいです」。1月に沖縄で自主トレをともにした小野寺が前夜に代打で一時逆転の満塁弾。ひたむきな後輩の活躍はエネルギーになった。「暖のがむしゃらさ、泥臭さは自分も忘れてはいけない」。決意を新たにしての第1打席だった。

2打席目に中前打を放つと、9回は左翼への安打で二塁を狙った。「自分自身、ああいうところで1本が大きい。6点差ありましたけど、次の1点を取るって意味でも大事」。惜しくもタッチアウトになったが、手綱を緩めず今季初猛打賞。思いをプレーで体現する背中は、後輩にも頼もしく映っているに違いない。

開幕から12戦全敗だったビジターで、やっとやっと初勝利。スタンドのファンに見送られグラウンドを後にする、神宮特有の帰路では温かい声が飛んできた。

矢野監督 神宮だけかな、球場の中を通ってね。負けた時はやじられることもあるけど、この1勝だけでもこんだけ喜んでくれるんやなと。俺らも諦めてるわけないし、ファンの人も諦めていない。プロである以上、結果でしか示せないところがある。全員で勝つところを見せていきたい。

指揮官がナインが、東都のファンにネバーギブアップを誓った夜。さあ4月反攻といきたい。【中野椋】

○…阪神井上ヘッドコーチ(3番佐藤輝、4番大山について)「チームの勢いがなかなか生まれない中で(大山を)4番に置いているという意味で、初回にホームランを打った悠輔、追加点をたたき出した輝明の働きというのは、『ほらほらみてごらん、あんたらがやれば勝てるでしょ』と、いつも言っているメッセージとして、明日もやってやろうぜとなってくれれば」

▼阪神がヤクルトに大勝し、連敗を4で止めた。今季これが敵地での初勝利。これまでビジターは12戦全敗だった。1952年(昭27)のフランチャイズ制後、開幕からビジター12連敗以上は54年洋松15連敗、56年広島12連敗、58年広島12連敗、73年近鉄13連敗に次いで5度目で、ようやく不名誉記録をストップした。なお、開幕カードは京セラドーム大阪でヤクルトに3連敗しており、甲子園以外では15戦全敗だった。