明大が、完全優勝で6季ぶり41回目の頂点に立った。

歓喜の輪の中央には、村松開人主将(4年=静岡)がいた。スタンドに向けて、こぶしを突き上げた。「勝ちへの執着があるチーム。全員でやるところが、いいところです」と胸を張った。

走攻守のバランスがそろう二塁手で、今秋ドラフト候補。しかし今年2月に「右膝半月板損傷」と診断を受け、クリーニング手術を受けた。チームメートの4年生には、1人ずつ「春のリーグ戦の最初には間に合わないかも」と告げた。「マジか」と絶句する仲間。自分もショックは受けていたが、いつも明るく振る舞った。「すぐに戻ってくるから、大丈夫」と言い続けた。

全治は3カ月。早期復帰を目指し、歩けるようになるまで2~3週間の入院。今春リーグ戦ではベンチ入りし、チームメートに声をかけて鼓舞し続けた。「当然、出られなくて悔しいという思いはあるんですけど、チームが優勝するために何をしたらいいかという気持ちの方が強い」。試合に出られないからこそ、客観的に見られる。今年のチームが大事にしている「ニュートラル」という言葉。「普通の状態をいかに保てるか。練習でできていることを、いかに試合で発揮できるか」。緊張しているそぶりの選手の背中を、そっと支えた。

主将に就任してから、1度も後輩を怒っていない。練習中に選手を集めて雰囲気を締めることはあったが、「お互いを尊敬しあう。悪いところばっかり目に入るけど、いいところを尊重していこうと思っています」。

寮生活を過ごす中で、プライベートの話を自ら振るなど、積極的にコミュニケーションを取ることでチームの和を大切にした。

全員で攻め、全員がつながる。復帰した村松も、代打で3打席に立った。「粘り強さがチームに浸透してきている。そこは強みだし、終盤に追いつけるのが成長できている」。試合を戦いながら強くなって、つかんだ天皇杯だ。【保坂恭子】