今季から投打二刀流に挑戦している日本ハム上原健太投手(28)が、20年9月24日西武戦(メットライフドーム)以来、615日ぶりの白星を挙げた。「日本生命セ・パ交流戦」の広島戦に「9番投手」で先発。打者としては3打数無安打に終わったが、本職の投手として今季最長の6回4安打無失点。乱打戦を予想したBIGBOSSを裏切る形で、勝利に導いた。5月を5割で乗り切ったチームは、6月を白星発進。このまま上昇気流に乗りたい。

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肩を上下させ、呼吸を整えた。上原が、最大のピンチに立ち向かった。3点リードの5回2死一、二塁。代打堂林にファウルで粘られた。プレートを外し、じっくり間を取った。頭をクリアにして投じた7球目。チェンジアップ117キロで空振り三振。両手を大きくたたき、ほえた。6回4安打無失点で、615日ぶりの勝利を挙げた。

慣れ親しんだ空気が、肩の力を抜いてくれた。広陵時代に過ごした広島。「バスの中から外を見ると見慣れた景色が見られたので、すごく懐かしかった」。マウンドでは、変化球がさえた。新庄監督が「カットボールとチェンジアップが良かった」と評価した2球種だ。「今日は落ち着いて投げることができた。楽しんで投げることができた」。殊勲の左腕は、言葉通りの笑顔だった。

昨年11月の秋季キャンプから、険しい道を歩み始めた。稲葉GMに提案された「二刀流」。2日間悩んだ末、出場機会を求めて決断した。身長191センチ、50メートル走は5秒7の快足。高い身体能力から、かねて切望されていた。2軍では今季、安打はまだないが、外野や指名打者としても出場している。その経験が今、成果となって表れ始めた。「投げる方に、すごくいい影響が出ている」。野手心理を理解することで、マウンドで余裕が生まれた。

困難なチャレンジを続ける上原に導かれ、チームは6月初戦を白星で飾った。3月、4月は白星が遠かったが、5月は勝率5割。確実に上昇気流に乗りつつある。上原自身も、交流戦は敵地で2試合連続無失点と上り調子。中6日なら次回は本拠地・札幌ドームでの登板となる。新庄監督は「相当かかるでしょう」とDH解除には否定的だが、現在は先発陣の一角として奮闘中。最下位からの巻き返しへ、この1勝を原動力にする。【田中彩友美】

【ニッカン式スコア】1日の広島-日本ハム戦詳細スコア