ありがとう、超人-。阪神糸井嘉男外野手(41)が引退試合に臨み、5回に代打で左前打を放ち、有終の美を飾った。

投手から野手に転向し、プロ生活19年で通算1755安打を積み上げた。「ホンマに感動した」と甲子園のファンに感謝し、超人と呼ばれた男がバットを置いた。

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阪神佐藤輝明内野手(23)が「走攻守」で超人魂を継承するプレーを見せた。初回2死。近本、大山、原口が四球を選び、満塁で打席が巡った。カウント1-0から広島森下の149キロの直球を右前に運んだ。

「絶好のチャンスでしたし、積極的に振り抜きました。いい結果になって良かったです。嘉男さん、ありがとう」

近大の先輩の引退試合に、先制タイムリーで花を添え、ベンチで見守った糸井も笑顔で拍手。現役最後の打席で左前打を打った時、佐藤輝も真っ先にベンチから飛び出し、手をたたいて喜び、先輩の雄姿を心に刻んだ。「集中して打席に入っていましたし、ベンチから背中を見ていて、声援や球場の雰囲気とかからも、スーパースターだなと感じました」。

試合前には右翼でともにシートノックを受け、ファンに向けて肩を組んであいさつ。目の下に付けているアイブラックに手書きで「7」を書いた。かわいがってくれた先輩のために特別な思いで臨んだ試合だった。

守っては、マクブルームの右翼への大飛球をジャンピングキャッチ。延長10回の西川の大飛球も捕球し、ビッグプレーで盛り上げた。先制打の直後には11個目の盗塁も決めた。ただ、延長10回1死一、二塁のサヨナラ機で見逃し三振。「これから成長した姿を見せられるように頑張りたいです」。糸井に白星を届けられず、悔しさをあらわにした。

試合後の引退セレモニーでは坂本、糸原とともに花束を渡し、抱き合った。兄貴分はプロ19年でゴールデングラブ賞を7度受賞。走攻守3拍子そろったプレーとユニークな言動で人気を集めた。虎の背番号8が「超人魂」の意志を受け継ぐ。【三宅ひとみ】