阪神は5位で天理・戸井零士内野手(3年)を指名した。広角に鋭い打球を放つ右のスラッガーで、甲子園に春夏通じて3度出場し、主将としても注目された。今夏の奈良大会決勝は生駒がコロナ禍でベスト布陣を組めず、天理は大勝。戸井は相手の無念を思いやり、喜びをあらわにせず静かに整列するようナインを束ね、話題に。球団は未来のチームリーダーとしても期待をかけている。

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プロの世界に飛び込む覚悟が出来ているのか、阪神からの5位指名にも戸井の表情は変わらなかった。

「小さい頃からテレビで見ていた球団。素直にうれしい気持ちです。選ばれたことに感謝して、阪神にふさわしい選手になりたい」

喜びの声の次に出てきたのは、1年目から遊撃争いに食い込む意欲だ。

「遊撃も含めて内野手で1年目から勝負したい気持ちがあります。自分は補強ポイントとして取られた。強いライナーを打てて、二塁打が売りなので、しっかりアピールしたいです」

岡田新監督は将来の主軸を任せられる右打ちの逸材を求めていた。強い当たりを広角に打て、ツボにはまったときの長打がある戸井はうってつけ。プロでも得意の二塁打でチャンスを広げていく。好きな選手に楽天浅村を挙げつつ、佐藤輝の存在にも目を輝かせた。「どうやったらそんなに強い球を打てるのかというのと、打席に立った時の考え方を聞きたい」。気分はもうタテジマの一員だった。

球団はそのリーダー性にも着目した。今夏の奈良大会決勝。相手の生駒は新型コロナの影響でベンチ入りメンバー12人を入れ替え、0-21で大敗した。主将の戸井は相手を思いやり試合中から優勝を喜ばないことをナインに伝え、静かに整列。その神対応で注目された。天理からの呼びかけで9月には友情の再試合が実現。生駒ナインからその試合後に「プロでも頑張って」と声をかけられたという。担当の山本スカウトは「大舞台に強く、主将としてチームを引っ張るなど、将来のチームリーダーとしての期待も出来る好選手」とコメントしている。

天理で過ごした3年間。「人間的にも成長できた。甲子園に出られたのも一生の思い出。仲間のみんなにありがとうと言いたいです」。そう言った時ばかりは柔らかな表情だった。心身ともに成長した17歳が、憧れのタテジマでプロの世界に踏み出す。【三宅ひとみ】

戸井零士(とい・れいじ)

★生まれ 2005年(平17)1月18日、大阪府生まれ。

★球歴 中央小2年で「ポルテベースボールクラブ」に所属。小5から松原第三中までは「松原ボーイズ」に所属し、中学ではU12日本代表、関西選抜などで活躍。天理では1年秋からベンチ入りし、昨春はセンバツ4強。高校通算13本塁打。遠投は105メートル。

★目標選手 楽天浅村。

★座右の銘 苦しまずして栄光なし。何かをかなえるには必ず苦しいことがあり、この言葉を浮かべると頑張れるから。グラブにも刺しゅうを入れている。

★野球以外の特技 極真空手(茶帯)。全国大会にも出場経験があり、8強になった。空手で培った柔軟性が現在でも生かされている。

★アイドル好き 日韓合同のグローバルオーディションプロジェクト「Nizi Project」で結成された9人ガールズグループ「NiziU」のファン。推しはAYAKA。

★食べ物 好きな食べ物は焼き肉で、嫌いな食べ物はなし。

★家族 父、母、姉。

★サイズ 181センチ、83キロ右投げ右打ち。

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