高卒10年目の楽天松井裕樹投手(27)が、史上最年少で同9人目となる通算200セーブを達成した。

1点リードの9回に4番手として登板。1死二、三塁のピンチを招いたが踏ん張り、無失点で切り抜けた。通算445試合出場での到達も、歴代4位のスピード記録。快挙も、喜びに浸らず、周囲を気遣った。

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みんなのために腕を振る。9回2死二、三塁。最後は、146キロストレート。西武中村を中飛に打ち取ると、松井裕は両手を天に突き上げ、ネット裏スタンドへ目を向けた。歓声で沸く本拠地楽天モバイルパーク。見守った家族やファンからの祝福を一身に受けた。「家族だったり、友人だったり、ファンのみなさんだったり。喜んでくれる顔が本当に僕のうれしさです」。記録達成よりも、周囲の笑顔を見て頬を緩ませた。

人一倍周囲を気遣う。今季の開幕戦前は「今年もよろしくお願いします」と、報道陣1人1人とグータッチ。2日に節目へ王手をかけると「僕は最後に投げただけ。(鈴木)翔天と西口がつないでくれたので、そこに尽きる。2人に聞いてあげてください」と、後輩リリーフ陣を立てた。弟和輝さんが社会人野球・ハナマウイに在籍していた21年、チームが全日本クラブ選手権に出場すると、岐阜の遠征先のホテルに選手全員分のゼリー飲料を差し入れた。

気配りができるからこそ、抑えへの責任感も強い。チームの勝利、他の選手の勝ち星やホールド…。さまざまなものが、自身の左腕にのしかかる。「みんなの気持ちを拾って、マウンドで最後抑えていければ。(抑えは)気持ちの部分が整ってくるというか、煮詰まってくる場所」と力を込めた。

プロ2年目から抑えに転向し、27歳での200セーブ。これからの目標も、たくさんの笑顔を届けること。「選手よりたくさんの裏方さんが動いてくれる。僕らが野球をしている部分は本当に一部にしか過ぎない。勝てば喜んでくれるし、強いチームのサポートをしていると誇りに思ってほしい」。年々増す感謝の気持ち。思いを投球に変え、これからも試合の最後を締めていく。【湯本勝大】

▼通算200セーブ=松井裕(楽天) 5日の西武2回戦(楽天モバイルパーク)で今季3セーブ目を挙げて達成。プロ野球9人目。初セーブは15年3月28日の日本ハム2回戦(札幌ドーム)。27歳5カ月での達成は22年山崎(DeNA)の29歳10カ月を抜く史上最年少。

◆松井裕樹(まつい・ゆうき)1995年(平7)10月30日、横浜市生まれ。桐光学園では2年夏の甲子園で大会史上最多の10連続を含む1試合22奪三振。13年ドラフト1位で楽天入団。15年から抑え転向。18年に史上最年少で100セーブ達成。19、22年セーブ王。15年プレミア12、17、23年WBCで日本代表入り。174センチ、74キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸2億5000万円。

○…田中将が松井裕の200セーブをたたえた。チームメートとなったのは日本球界復帰後の21年からだが、松井裕が1年目を終えたオフから9年間ともに自主トレを行っていた。“愛弟子”に、「積み上げることは簡単なことじゃない。若くして守護神になって、200に届くのは素晴らしいと思います」と祝福した。

▽楽天石井監督(松井裕の通算200セーブに)「特殊能力の奪三振を持っている。ピンチを切り抜けられるし、今日も1死二、三塁になったとき、三振が欲しいというところで取れる。そういうところが彼の魅力かなと思います」

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