あの放物線に夢を見た-。阪神佐藤輝明内野手(24)に待望の1発が飛び出した。巨人戦の5回に右翼へ今季1号ソロ。主砲が口火を切り、5連打などで1点差に詰め寄った。5点差逆転勝ちはならなかったが、佐藤輝が復調の兆しを見せたことはプラス材料。きょう27日に、リベンジのG倒だ。

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甲子園の雰囲気が一変した。5点ビハインドの5回。佐藤輝が先頭打者で打席に立った。巨人先発戸郷の2球目、144キロ内角直球を豪快にフルスイング。打球は鮮やかな放物線を描き、右翼席に突き刺さった。20試合、75打席目での今季1号。プロ3年目で一番遅いアーチだった。

「いい感触で打つことができましたし、久しぶりにダイヤモンドを1周できて気持ちよかったです。ここまで時間かかってしまったけど、変わらずに、しっかり頑張りたいと思います」

待望の1発に思わずガッツポーズも出た。「ウル虎の夏2023」のサードユニホームお披露目試合。今季初の甲子園での伝統の一戦で、若き主砲が意地を見せた。苦戦していた戸郷に対し、代打渡辺諒の適時二塁打など5連打で1点差に迫った。誰もが5点差逆転勝ちの夢を見た。

ここまで打撃不振に苦しんだ。「結果が出るまで頑張るだけ」「切り替えてやるしかない」。日頃はマイペースな男も、自分と向き合い試行錯誤した。「細かい部分を修正して練習しています」。フリー打撃では、ノーステップや、すり足気味の打撃を試すなど必死にもがいた。本塁打の打席は、少し足を上げてタイミングを取っていた。「変わってくると思います」と復調の兆しをつかんだ。岡田監督も「きっかけになるやろうなあ。昨日の室内からよかった。昨日(本塁打が)出る言うてた」と爆発を期待した。

反省もあった。1点を追う8回1死二塁からオコエの打球をはじいた。長野の3ランにつながる痛恨の失策だった。試合後、敗戦に表情を崩すことはなかったが、豪快な放物線は明日への希望。「徐々によくなっていると思うので、それを信じて。勝ちたいと思います」。虎が誇るスラッガーの逆襲が始まる。【三宅ひとみ】