大リーグのヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(48)が28日、都内のホテルで行われた日本外科学会定期学術集会で「人にない“武器”をどう身につけるのか?」と題した講演会を行った。進行役は、元ヤンキース広報で、現在は江戸川大教授の広岡勲氏が務めた。

松井氏が、自分の武器を身につけようとした契機は、ちょうど30年前にあたる1993年(平5)の新人時代にあったという。

「オープン戦の初打席で石井一久さん(現楽天監督)のカーブに見逃し三振しました。ストレートに見えて、体に当たると思ってよけたら真ん中のストライク。見たことのないボールで衝撃を受けました。このままではダメだと思い、試行錯誤しました」

具体的には、ボールの見方とスイングを挙げた。

「投手が投げてから、ボールの軌道を細かいコマ送りにするんです。1コマが長いと軌道は分からないので、できるだけ1コマを小さくする努力をしました」

スイングは、監督だった長嶋茂雄氏と取り組んだ素振りが効果的だったという。

「監督はスイングの音で判断するのですが、そのうち私自身も音で分かるようになった。視覚や第三者の目で判断する選手は多いでしょうが、聴覚でスイングを判断する選手はなかなかいないと思います。これも、私の武器になりました」

長嶋氏とのエピソードで会場を沸かせた。

「最初は1000日計画といって、3年間で4番打者に始めたことですが、結局4番になってからも、大リーグに行ってからも監督との素振りは続きました。監督がニューヨークにいらしたとき、バット2本を持って5番街のプラザホテルに入っていきました。ちょっと恥ずかしかったですけど、本当に感謝しています」

今後、身につけたい武器についても言及した。

「今はヤンキースで若手選手を指導していますが、教えるのは難しいと感じています。特に英語なので至難の業です。自分の知識や経験を100%伝えられる武器が欲しいですね」

約1500人の参加者から大きな拍手を受けるなど、講演会は大盛況に終わった。松井氏は「久しぶりにたくさんの方の前に立ちました。専門的な会なので、私の話が息抜きになってくれたらいいですね」と感想を語った。

また、今オフにFAとなる資格を有するエンゼルス大谷翔平選手について「希望のチームに、行きたい条件、環境で行けるでしょう。メジャーで一番の選手ですから。彼はハンサムでスタイルもいいので、どんなユニホームも似合うと思います」と話していた。