西武隅田知一郎投手(23)が自身初の完封勝利を飾った。
5安打11奪三振、132球を投げ「すごくうれしいんですけど、ちょっと疲れました」とお立ち台で笑顔を見せた。
8月9日に節目の勝利を手に入れた。長崎県出身の隅田にとって意味がある。登板を控えた前日8日、報道陣に切り出した。
「明日、原爆の日なので。そのことも書いてもらって。僕も頑張ります」
長崎空港のある大村市で生まれ育った。長い夏休みの最中、8月9日だけは登校日だった。長崎県民は皆、そう。1945年にあったことを何度も教わった。
「背中にガラスが刺さって溶けた痕がある被爆者の方が学校に来て、講演されたりしたので。衝撃を受けたことはいっぱいあります」
長崎では8月9日、午前11時2分に平和を祈る鐘が響く。「普段だったら黙とうとかしてるんですけど、今日は試合前だったので睡眠を大事にして」。少し恐縮しながら話した。
黙っていることだってできた。でも、あえて自分から切り出した。
「どんどん薄れていくと思うので。日本の歴史が、原爆が、忘れられないように。後世に伝えていくみたいなのも習ったんで」
発信力の強いプロ野球選手としての使命感。グラウンドで習ってきた技術を結集させ、堂々たる大人の言葉で、平和な世を願った。【金子真仁】