頂点へ向かう最初のマウンドに立ったのは、まっさらな高卒3年目の剛腕だった。

オリックス山下舜平大投手(21)はのびのびと、規格外の成長曲線を描いた。「自分がしないといけないことは、しっかりしたので今があると思う。遠回り、時間は少しかかったかもしれないですけど、自分はあまりそう感じることもなく、来ていると思います」。プロ初登板&初先発で開幕投手を任されると無傷の5連勝。8月まで9勝3敗、防御率1・61の活躍で、首位への推進力となった。

「大事にしなきゃいけない。育てていかなきゃいけない」。今春の宮崎キャンプ。未完だった大器を見つめながら、中嶋監督はそう語っていたという。球界の宝になる逸材だからこそ、焦らず長い目で育てる。指揮官の親心に、山下は成長意欲で応えた。

中10日から登板間隔が短くなる時はトレーナー任せではなく、自分のやりたいことや意図を伝えて、一緒にトレーニング方法を組み立てた。「いろいろな情報交換が飛び交っていて、常に勉強しています」。練習では先輩たちの話に熱心に耳を傾けた。「経験値としていろいろなことを吸収しながら、自分に合っているものを」。腰の張りの影響で、8月26日のロッテ戦を最後にマウンドから遠ざかっているが、ぶれない考え方と向上心で、周囲の想像を超える成長を遂げた。【磯綾乃】