台湾でのウインターリーグから帰国し、数日が過ぎた。西武青山美夏人投手(23)は「ニーハオとシェイシェイだけ覚えました」と笑う。

観光の時間も少ない。プロ1年目のオフ、異国で野球に染まった冬。「ジャンクフードが多かったですね。日本料理の店とかもなかなか行けなくて。でも、行った時の揚げ出し豆腐がめちゃくちゃ、めちゃくちゃうまくて。その味が、もう」。2度も強調するほど、絶品に感じたという。

開幕戦で9回を任され、オリックス森に同点弾を浴びたことからプロ野球人生が始まった。「あれから始まったけれど、あの悔しさが糧になって」。最後まで1軍のマウンドは守った。

23日は、横浜隼人(神奈川)の先輩でもあるオリックス宗のタイトル受賞祝賀会に参加した。4月、先輩との初対決はカーブを2球続けた。

宗は笑いながら言う。

「開幕戦から抑えを任されて、相当期待されているんだろうなと。それで初球にカーブを投げてきて。2球目もカーブ。『なめられてるのか』と思ったので、必死に食らいついてレフト前に打ちました」

2人の関係性から気負うことを悟った捕手が、あえてそうさせたのかもしれない。青山自身は直球を投げるつもりだったという。

直球は思い出深い球だ。高3夏の神奈川大会を終えると、県選抜に選ばれた。来日したスリランカのU18代表と壮行試合を行った。日本ほど野球が盛んな国ではない。相手とのレベル差が考慮され、神奈川県選抜側は「直球のみ」の特別ルールだった。

青山も直球だけを投げた。抑える気満々で。150キロをマークした。しかし。

「普通に当てられました。打たれました。いくら速くても、やっぱり直球だけじゃ打たれるんだなと実感しました」

亜大進学後は変化球にもしっかり取り組み、相乗効果を高めて、今がある。

スリランカ戦から5年。今回の台湾でも意図的によく直球を投げた。

「台湾の選手はまっすぐに強いと聞いていて。強いのを分かっててファウル取りに行ったんですけど、打たれることもあって」

いろいろ試した。プロ2年目の来季は先発転向が決定的だ。異国でさらに引き出しを多くし、新たな仕事に臨む。

「投手の層は厚いですし、球の質とかそういう部分より、何よりも結果を。先発という話になるなら、まずは最低5イニングはしっかり投げられるように」

揚げ出し豆腐がじわじわと染みていくように「先発青山」の力を熟成させていく。【金子真仁】

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