日本一のリードオフマン、阪神近本光司外野手(29)が、今季も日刊スポーツにコラム「研鑽」を特別寄稿する。24年の第1回は、2月の沖縄・宜野座キャンプで動画再生アプリを用い、打撃向上に取り組んでいたことを激白。球団史上初のセ・リーグ連覇、その先の黄金期へ「ここ1、2年が勝負」と自覚し、プロ6年目のキャリアハイで勝利に貢献する。【取材・構成=中野椋】

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日刊スポーツ読者の皆さん、近本光司です。2月27日でキャンプが終わりました。沖縄にもたくさん足を運んでいただき、僕たちの力にもなりました。甲子園での練習が再開し、今年もまた、自分なりの「研鑽」を積んでいきます。

キャンプでの1カ月間、実はあるアプリにすごく助けられていました。撮影した動画を約5秒後に「追っかけ再生」してくれるアプリを使い始めたんです。屋外でのフリー打撃は周りの選手との兼ね合いもあるので使用しませんでしたが、室内で打撃練習をする時は常にアプリを起動させて、ケータイやタブレット端末でチェックしていました。

鏡やリアルタイムの動画で自分のスイングを確認しようとすれば、画面などを見ながらでないとできません。このアプリを使うことで、その必要はなくなりました。自分の思うようにスイングをして、その映像を直後に確認することができる。今のはどうだったか。やろうとしていることができたか、できていないか…。その繰り返しの中で「今のスイングはこうなっているから、次はこうしよう」とすぐに修正できたのが、キャンプで一番よかったことです。

その中で、あらためて素振りは大切だと気づきました。ボールが来たらどうしても力みは生まれてしまいます。素振りのスイングがベストかと言われたら、そうでもないのかなというところもありますが、まずは素振りでしっかりできることが一番大事。僕は素振りと、実戦に入った時のスイングをすり合わせていくイメージを持っています。そうやって調整していくのが「練習」だと思いますし、楽しいところでもあります。

今はバットの重心を意識してスイングをしています。バットの中心じゃなく、重心。バットのちょうど真ん中を持てば、絶対にトップの方が重いですよね。重心は、その重さのバランスがとれる位置。構える時もトップをつくる時も振りだす時も、その重心を動かしたくはありません。バットの重心を意識して、遠心力も使って、どのコンディションでも再現性の高い、同じような出力が出せるスイングを目指しています。

昨年は日本一になりましたが、例えば05年に147打点を記録した今岡コーチのような「あの人といえば」と、代名詞になるような成績は誰も残していません。僕らはそこを目指さないといけないと思っています。選手は、まずは自分の成績を考えたらいいし、自分が活躍することが大切。「勝つためにプレーする」って抽象的すぎると思うんです。そうじゃなくて「ヒットを打つ」という強い思いを持つこと。そのヒットを得点圏で打つことができれば、チームは自然と勝てるわけですから。

今年は新加入の選手がたくさんいるわけではありません。同じ戦力で戦うことは難しいですけど、それはすごくプラスになるとも思います。新戦力はどうしても「1年だけだったな」と見られますが、同じメンバーで戦って勝てば、それは「実績」になっていきますから。2年、3年と同じメンバーで成績を残し続けた方が、黄金期としてはより良いかなと。そのためには、ここ1、2年が勝負。今年は、大事な年になると思います。

個人的には今年で30歳ですが、分岐点とは思わないようにしています。人間、30歳になったからといって「はい、体が変わりました」とはならないと思います。誕生日は11月。30歳になった時にはシーズンは終わっていると思いますし、今シーズンはまだ「29歳」でやっていくつもりです(笑い)。

状態は今、めっちゃいいです。やろうとしていることが打席の中でできています。あとはストライク、ボールをしっかり見極めること。そして、変化球に対してどれだけスイングができるのかということ。オープン戦が本格化するここから、しっかり調整していきます。(阪神タイガース外野手)