米スタンフォード大に進学する佐々木麟太郎内野手(18=花巻東)が4日、都内で行われた日本スタンフォード協会(スタンフォード大学の卒業生による同窓会組織)主催の「佐々木麟太郎壮行会」に出席した。

1日に卒業式を終え、初めて公式の場に姿を見せた。「今まで制服とユニホームしか着たことがなかったので。ちょっと不慣れな格好ですが、今、自分ができる最低限の準備をさせていただきました」。黒のニットの上に黒のジャケットを羽織り、ちょっぴり大人っぽい服装で照れくさそうに笑った。

スタンフォード大の一員として、最初の1歩だ。出席した90人の先輩たちの前に緊張した表情で立ち、堂々とあいさつした。「佐々木麟太郎と申します。本日はこのような場を用意していただいたことに感謝申し上げます」。続けて、父佐々木洋氏(48)が花巻東の監督で、幼少時からブルージェイズ菊池、そしてドジャース大谷をグラウンドで見た記憶。甲子園に応援に行ったことが唯一の家族旅行だったこと。今回、世界を目指すきっかけとなったのは父の言葉「日本地図ではなく世界地図を見て大学を決めるべき」に影響されたこと。スピーチを約10分近く行い、会場からは大きな拍手が送られた。

覚悟を新たにした。同大の先輩たちに、学校生活、大学での授業環境などを聞き「野球選手が終わった後も考えた人生戦略も考えてきた。その中で一番いい選択ができたと思いました」。興味のあるビジネスへの展開だけでなく、新たな興味、出会い。「やりたいこと、学びたいことが見つかると思う」。世界のスタンフォード大に触れ、選んだ道を確信した。

野球と勉強との二刀流のステージは整った。あとは自分で道を切り開くだけだ。「大学生活への覚悟が決まりました。挑戦の連続だと思うけど乗り越えていきたい」。先輩たちのアドバイスを耳に、佐々木麟の夢は現実へと近づいていく。【保坂淑子】

○…集まったスタンフォード大の先輩たちに、佐々木麟から質問をする時間が設けられた。「英語の上達のために、必要なことは?」の質問には「ランゲージパートナーを」「仲間を作るといい」など、ざっくばらんなアドバイスを受けた。「大学で勉強をした方がいいことは? 意識した方がいいことは?」という質問には「学部以外にも興味のある授業を積極的に参加してみては」などの助言を受け、真剣に耳を傾けた。

○…佐々木麟はスピーチの終盤で、あらためて自身の名前「麟太郎」が勝海舟の幼名から名付けられたことに触れた。「勝海舟先生も、世界から日本を俯瞰(ふかん)して学び、今の近代日本の礎を築いたと聞いています。自分自身も、この名前に誇りを感じています」と胸を張った。勝海舟に自分を重ね合わせ、海を渡る。「今、こういう決断をして、自分自身、大変喜びもありますし、誇りに思っています」と続け、集まったOBをうならせた。

◆スタンフォード大 米カリフォルニア州にある世界屈指の名門大学。米国では「東のハーバード、西のスタンフォード」と称され、タイガー・ウッズ、鳩山由紀夫氏、アグネス・チャンらを輩出。野球部は1892年にリーグ戦初参加。愛称はカージナル。全米体育協会(NCAA)1部、PAC12(太平洋岸)所属。大学ワールドシリーズ2度(87、88年)優勝。主なOBに通算270勝で殿堂入りのマイク・ムシーナ、93年サイ・ヤング賞のジャック・マクダウェルら。