虎のシュレックが、ド迫力デビューを飾った。阪神の新外国人ケビン・メンチ外野手(31=ブルージェイズ)が第2クール初日の5日、初の屋外フリー打撃を行った。55スイングで15本のさく越えをマーク。鋭いインパクトと大きなフォロースルーが特徴的で、弾丸ライナーの本塁打を連発し、メジャー通算89本塁打の実力をアピールした。真弓明信監督(55)はビデオの資料映像と比べて「今日のほうが迫力があった」と絶賛した。

 バットに押しつぶされたボールが、真っ青な沖縄の空を切り裂いた。メンチが放った弾丸ライナーが左翼に伸びた。スタンドの芝生席を軽々と越えて、防球ネット中段へ。あっという間に着弾した推定120メートル弾が、周囲を驚かせた。

 速くて、でかくて、大きい。オマリースカウトが打撃投手を務めたランチ特打は、55スイングで15本のサク越え。筋骨隆々の肉体から繰り出されるスイングはスピード十分。フォロースルーは左肩に左手がつくほど、ドでかい。打球のほとんどが弾丸ライナーで、3連続を含めてサク越えを連発。メジャー通算89本塁打の看板にうそ偽りはなかった。

 メンチは「今日は70~75%の力。まだまだ。アメリカではキャンプが始まっていない時期だから」とさらり。ライナー性の当たりには「あれが僕の持ち味だ。ゴルフの3番アイアンで打つように強いラインドライブの打球を打ちたい。その感覚が大事だ」と言った。

 前日4日の休日は、アッチソンとゴルフに出掛けてスコア87をマーク。アッチソンに「あいつはゴルフでもパワフルなんだ」とあきれさせるほど。ゴルフといえば指揮官の名前が真っ先に浮かぶが「いつか真弓監督と勝負したいね」と不敵に笑っているという。

 真弓監督は、メンチの実力を絶賛した。この日は客観的な視点を保つために遠目で特打を見守った。それでも「今の段階ではいうことがないというか、悪いところはない。(資料)ビデオの試合の中に比べてたら今日のほうが迫力があった」と驚きを隠せなかった。

 指揮官が特に評価したのはスイングの軌道だ。「コンパクトに見えるが、フォローが大きい。フォローの大きさは距離に比例する。内から外の軌道だからタイミングを外されてもついていける」と太鼓判。メンチは桜井、林らと右翼争いの渦中にあるが「30本ぐらい打たないとレギュラーになれない。あそこはハイレベルな競争になる」と指揮官はうれしい悲鳴を上げた。

 ついにベールを脱いだ虎のシュレック。緊張するはずの初フリー打撃だが、得意のユーモアも忘れなかった。この日の初球はいきなりド派手な空振り。「昨日から決めていた。みんなをリラックスさせるためだよ」とニヤリ。試運転段階でも強烈なインパクトを周囲に与えた。【益田一弘】

 [2009年2月6日10時41分

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