<西武3-7楽天>◇5日◇西武ドーム

 ノムさんに「棚からボタもち」の孝行息子が誕生した。右肩の張りのため登録抹消となった楽天田中将大投手(20)の代役として、ドラフト3位ルーキー井坂亮平投手(24)を5日の西武戦(西武ドーム)にプロ初先発させる仰天采配。2軍で0勝3敗、防御率8・36の右腕は6回6安打3失点と好投し、プロ初勝利をマークした。ルーキーでのデビュー戦白星は球団史上初。打線も球団初の7試合連続2ケタ安打で援護。「捨てゲームや」のはずが、うれしい誤算で首位をガッチリ守った。

 まさかの事態に大慌てした。勝利のハイタッチが終わると、なぜかセギノールがウイニングボールをスタンドに放り投げた。キャッチしたファンに「ボール、返して~」。野村監督をはじめ、首脳陣がそろって内野スタンドに向かって両手を伸ばした。何てったって、ルーキー井坂がプロ初登板初先発で初勝利を飾ったのだから。厚意で戻ったボールを野村監督から手渡され、ヒーローは「一生の宝物にします」と素直に喜んだ。この日からキャッチボールを再開した田中からは、試合前に「頑張ってください」とエールを送られていた。

 井坂

 (代役の)プレッシャーはありました。(田中と同様)完投?

 それは意識しなかったです。(勝利の)実感はないです。チームが勝たせてくれた勝利です。勝ったことは自信になります。いい意味で期待を裏切れたので、良かった。

 まさかの先発起用にも動じなかった。186センチの細身からテンポよく、打たせてアウトを重ねた。140キロ前後の直球にはキレと角度がある。打たれそうで打たれない。最大のピンチは3点差に詰め寄られた5回2死二、三塁。巨人から移籍してきた清水に0-2とボール先行ながらも気後れしない。6球目は内寄り142キロで左飛に打ち取り、勝利投手の権利を得た。6回3失点。上々のデビューだった。

 前日4日、連勝が止まった野村監督は連敗覚悟で起用した理由を明かしていた。「松井(2軍監督)が『推薦できるのはいない。井坂もまだ…』と言うところを、こっちが無理やり投げさせるんだ。台所は苦しいからね。嘆いてもしょうがない。いないものはいないんだ。この3連戦は、マー君の故障がこたえている」。しかしトーンは一転。「孝行息子」の誕生に試合後は上機嫌。「まさか井坂で勝とうとは思わんだろ。負けてもともとだったんだ。今日負けたら、明日も負ける。今日の勝ちは価値がある!」と、うれしい誤算に悲鳴を上げた。さらに続けた。「井坂、初めて見るんだよ。いいかげんな監督だよな。2軍戦も見ていない。(186センチの)長身が気に入ってな。直感?

 そう。オレが勝手に(1軍に)上げた」と、イチかバチかの抜てきの真相を明かす。

 「捨てゲームや」などと、試合前に黒星の予防線を張っていたが、ひそかに勝算もあった。「キャッチャーが違うからな。投手は2軍でも捕手が違う」と、秘蔵っ子・嶋のリードに勝機を求めていた。100球以内を予定していたが、117球の熱投で初勝利。「楽しみな投手だよ。いい雰囲気。背が高くて投手らしい。テンポもいい。四球出す心配もないしな。自信を付けて、慣れてくれれば、ローテーションの一角、取れるんじゃない?

 24歳か。次の監督に、いいプレゼントになるよ」。チクリとフロントへの皮肉を忘れない野村監督だったが、それもご機嫌の証しだった。【金子航】

 [2009年5月6日9時5分

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