<中日4-1阪神>◇6日◇ナゴヤドーム

 中日落合博満監督(56)が大胆な采配で自力V消滅に待ったをかけた。不振のトニ・ブランコ内野手(29)を5番に下げ、和田一浩外野手(38)を1年ぶり3番に、森野将彦内野手(32)を2年ぶり4番に置いた。和田が決勝打を放ち、森野が2安打するなど打線が活性化。8回にはブランコに来日初の代打を送って追加点をもぎ取った。連敗を5で止め、引き分け以下で自力優勝の可能性が消滅する正念場をしのいだ。

 連敗を止める。落合監督の意気込みはまず、試合前のスタメン発表に表れた。絶不調のブランコを5番に下げ、3番に和田を、4番に森野を据えた。引き分け以下で自力優勝の可能性が消滅する重要なゲームで今季初の新打線を組んだ。

 神宮の3試合でわずか4得点に終わった打線が活性化した。2回、4番森野がチーム初安打で出塁すると堂上剛のタイムリーで先制した。さらに同点に追いつかれた5回には2死一塁から3番和田。阪神先発鶴の内角へのシュートを左翼線にはじき返した。「何とかつないでいこうと思っていた」。リーグ首位打者が値千金の決勝タイムリーを放った。

 1点リードの8回には完投ペースの先発吉見が代打関本に四球を与え、1死一、二塁のピンチを招くとすばやく動いた。「(次打者の)鳥谷を嫌がるならわかるが、何で関本をあんなに警戒するのか。何か感じるものがあったんだろうな。あのまま行ったら打たれている」。迷わず浅尾にスイッチしてピンチを切り抜けた。

 そして、最も衝撃だったのはその裏の攻撃だ。和田、森野で無死一、二塁のチャンスをつくると、そこまで15打席連続無安打5番ブランコに代えて岩崎達を代打に送った。助っ人にとっては、来日2年目で初の代打。今後へ向けてB砲の復活は不可欠だが、勝利のため、非情に徹した。岩崎達がきっちり犠打を決めると、堂上直の適時打などで貴重な追加点を奪った。停滞しているなら、動かせばいい-。強引なまでのタクトで打線をよみがえらせた。

 「まあ(打席に行くまでの)リズムとかいろいろありますけど、打席の中でやることは一緒です」。昨年5月6日広島戦以来、1年ぶりの3番に座った和田は普段と変わらない仕事を果たした。「(4番が)気にならないと言えばウソになるが、打席に立てば1対1の勝負。何か手は打ってくるだろうと思っていたから驚きはしなかったです」。08年のシーズン最終戦以来、2年ぶりに4番を任された森野も期待にこたえた。

 「打順は監督が考えるよ。マスコミが考えるわけじゃない。そうだったら楽でいいけどな」。落合監督は自慢の「BMW」をシャッフルした理由を語ろうとしなかった。がけっぷち指揮官が動き、選手が応えた。自力V消滅の危機は変わらないが、再浮上のきっかけはつかんだ。【鈴木忠平】

 [2010年8月7日11時8分

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