<横浜3-5中日>◇28日◇横浜

 完全復活弾だ!

 中日和田一浩外野手(38)が勝負を決める3ランを放った。2点をリードした3回無死一、二塁、左翼席に弾丸ライナーの31号をたたき込んだ。02年の自己記録(33本塁打)更新も見えてきた。左足首に自打球を当てた8月は不振だったが、ここ4試合連続打点で復調を証明した。逆転優勝へ、必要不可欠な男のバットに当たりが戻ってきた。

 和田が勝負を決めた。2-0とリードした3回無死一、二塁。横浜先発阿斗里のど真ん中の直球をたたきつぶした。独特の圧倒的な打球スピードで左翼スタンドに突き刺さった。「とにかく走者をかえしたかった」。31号3ランで5-0。追加点が取れないチームにとって待望の1発だった。

 これで25日巨人戦(東京ドーム)から4試合連続安打だ。巨人、阪神との激しい優勝争いを制する上で絶対に必要な条件が和田の復調だった。11日横浜戦(横浜)で左足首に自打球を当てた。負傷を抱えて出場してきたが、24日巨人戦までの12試合は打率2割6分2厘、1本塁打、2打点とさすがに結果は出せなかった。今季、和田の無安打試合の勝率が3割5分7厘と極端に下がるチームにとっても深刻な問題だった。

 横浜で自打球を当てた直後、チーム関係者は和田の左足首を見て驚いたという。通常の2倍ほどにふくれあがっていた。ただの打撲ではなく、骨にまで損傷が出るほどの重傷だった。それでも和田は痛みを口にせず、出場し続けた。そして、落合監督も足を引きずる和田を見ながら、メンバー表に名前を書き続けた。

 「痛いのはわかっている。原因もわかっている。出られないんだったらオレの前で痛いって言うだろう。そしたら、だれか代わりを探すよ。でも、和田はそれを言わない。だったら使う。それだけのことだ」。現役時代、主砲の責任を背負い続けた落合監督と和田のプロ意識が共鳴していた。1試合も欠場することなく、最悪の状態を乗り切った。

 試合後、和田は本塁打の余韻に浸ることなく、厳しい表情で決意表明した。「(状態が)いいとか、悪いとか言っている時じゃない。高校野球のように1試合、1試合、戦っていかなければ優勝できない。高校野球だよ!」。過酷な三つどもえの優勝争い。38歳のベテランは明日なき覚悟で戦い抜く。【鈴木忠平】

 [2010年8月29日12時3分

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