<日本シリーズ:中日2-5ロッテ>◇第1戦◇30日◇ナゴヤドーム

 36年ぶり2度目の顔合わせとなった対戦は、ロッテが中日に先勝した。前回対戦した1974年以来、日本シリーズでは8連勝。けん引したのはポストシーズン男2人だ。1点を追う3回、清田育宏外野手(24)が新人ではポストシーズン最多3本目となる同点ソロ。05年の第1戦でも4打数4安打と打ちまくった今江敏晃内野手(27)が3打数3安打と「シリーズ男」の本領を発揮。中日強力投手陣を打ち崩し、最高のスタート切った。

 清田が、とてつもないことをやってのけた。3回、1死。吉見の2球目のフォークを思いきり振り抜いた。角度よく上がった打球はグングン伸び、バックスクリーンへ一直線。三塁を回ると、何度も小さくガッツポーズで喜びを表現した。逆転された直後の同点弾。「1打席目にヒットが出て、2打席目は余裕を持って打席に入れました」と、堂々とした表情だった。

 とびっきりの笑顔を見せる、あどけない新人も肝っ玉はすごかった。レギュラーシーズンでは2本塁打だが、ポストシーズンでは3本目。長嶋、原、仁志を越え、新人最多となった。試合前「打席に立つより、シートノックが緊張しますよ。(CSファーストステージ)西武のときの方が緊張しましたね。でも昨日の夜から緊張はしてたんですけど、しっかり眠れました」と、緊張感よりも初めての舞台を楽しむかのような口調だった。

 前日29日の練習でも、感覚をつかんでいた。上半身の力を抜いて振り抜く形に、金森打撃コーチも「今の感じだったらいいぞ」と太鼓判。その感覚を忘れず、最高の結果を生んだ。千葉マリンでは恒例となった早出特打。今では肩を組んだり、師弟愛のような仲の良さを感じさせるほど、金森コーチを慕っている。それでも、今季開幕直後にブレークした荻野貴を引き合いに「僕は2番弟子ですよ。最初は荻野ですから」と、おどけて話す明るい性格も併せ持つ。CSファイナルステージを勝ち抜いた直後は、知らない人からも祝福メールが来るほど知名度も上昇。チームに欠かせない頼もしい存在となった。

 ポストシーズンではキーマンとなる「短期決戦男」を襲名する勢いだが、忘れていけないのが今江だ。この日3打数3安打。05年の日本シリーズと合わせ、第1戦に限っては7打数7安打とシリーズ男ぶりを発揮した。「05年のシリーズは無我夢中。今回は05年から、いろいろ苦しんだこと、勉強したことを出そうと思っています」と満足そうだ。お立ち台では「清田が1、2打席目に打ったんで、僕の記録(8打席連続安打)抜いちゃうんじゃないかと思いましたよ」と冗談めかしたが、清田は「新シリーズ男?

 なりません。今江さんです」ときっちり先輩をたてる余裕も見せた。

 若手の活躍が光り敵地で大きな1勝。西村監督も「3回にすぐに逆転できたのは大きかった」と目を細めた。日本シリーズは中日と対戦した74年第4戦から8連勝。もはやミラクルだけではない。5年前の日本一を思い起こすような強さがある。【斎藤庸裕】

 [2010年10月31日8時35分

 紙面から]ソーシャルブックマーク