<日本ハム9-1西武>◇30日◇札幌ドーム

 2年目の佑ちゃんは「持ってる」んじゃなく「背負って」いた!

 プロ野球は30日、セ・パ両リーグが同時開幕。初の開幕投手を託された日本ハム斎藤佑樹投手(23)が、期待に応える快投でプロ初完投勝利をマークした。本拠地・札幌ドームでの西武戦で、110球を投げて4安打1失点。お立ち台では大リーグ・レンジャーズに移籍したダルビッシュの穴を埋め、新エースとしての立場を背負っていくことを誓った。

 イニングを重ねる度に、斎藤の表情に自信がみなぎる。入団以来、最も頼もしく、力強い背番号18が、開幕マウンドを支配した。1回2死一、二塁で打者は5番嶋。もう少しで本塁打という大飛球を打たれ「一瞬びっくりしましたけど、あれがファウルになったのが大きかった」。二ゴロでピンチを切り抜けると、味方の大量援護にも守られ、スイスイと9回を4安打1失点に封じた。

 踏み込んで打ちにくる打者が多い西武に対し、内角の球を有効に使った。受けた鶴岡は「直球はいいボールが行っていた。制球が良かったのも大きい。僕も、本人も、思っていた以上に調子が良かったと思う」と振り返る。直球はプロ最速タイの145キロをマークした。

 3打数無安打に終わった西武浅村が言う。「ボールがきてました。自分には真っすぐだけだったが、力強かった」。ぴりっとしなかったオープン戦から、驚くほどの変貌ぶり。開幕戦という大舞台で、プロ入り初の110球完投勝利を演じた斎藤は「泣いてしまうと思ったけど、興奮しすぎてそういうことはなかったですね」と、うれしそうに笑った。

 オープン戦で結果を残せないまま迎えた10日の侍ジャパンと台湾選抜との一戦。試合前、会場を訪れていた早大前監督の応武篤良氏(53)に「焦らずにやれ」と励まされた。「オープン戦で打たれているのを見ていてくれたみたいで『大学の時もそうだったけど、リーグ戦では抑えていたんだから』と」。救われた気がした。

 開幕投手争いの中で、折れそうになった心。口数が減り、思い詰めたような表情が目立つようになった。ライバルかつ最も近くで見守っていた武田勝は「自分の実力を分かっているから不安なんだと思う。最後は開き直るしかない」と話していた。その信頼する先輩から、不安視する周囲を「見返してこい!」とエールを送られた。負けん気を大一番で発揮する。これこそが栗山監督が信じ続けた、斎藤の才能だ。

 チームに4年ぶりの開幕戦勝利をもたらし、球団史にも名を刻んだ。日本ハムで入団2年目での開幕戦勝利は85年津野以来2人目。舞台が華やかになればなるほど輝くヒーローは、お立ち台の上で約3万6000人のファンを前に、きっぱりと言った。「今は“持ってる”ではなく“背負っている”という気持ち。隙だらけかもしれませんが、ダル(ダルビッシュ)さんの穴を少しでも埋めていきたい」。“持ってる”を卒業し、実力でチームの柱と認められる投手に。「開幕戦を斎藤で行って良かったと言われるよう、1年を通して機能したい」。斎藤にとって開幕戦は、始まりの1歩に過ぎない。【中島宙恵】

 ▼斎藤が開幕戦でプロ初完投勝利をマークした。斎藤の完投は昨年9月10日楽天戦(田中と投げ合い、4失点で敗戦投手)に次いで2度目で、勝利は初めて。開幕戦で初完投勝利を記録したのは62年4月7日に柿本実(中日)が広島戦でマークして以来、プロ野球50年ぶり。パ・リーグでは榎原好(毎日、50年3月11日西鉄戦)以来2人目、日本ハムでは1リーグ時代の吉江英四郎(急映、48年4月5日金星戦)以来2人目の珍しいケースだった。