<オリックス2-5日本ハム>◇23日◇京セラドーム大阪

 投打「二刀流」ルーキーが進化を証明した。日本ハム大谷翔平投手(19)が先発したオリックス戦で自身最長の6回2/3を4安打1失点に抑えて3勝目。序盤は制球に苦しんだが、要所でチェンジアップ、フォークを効果的に使い、自己最多の9三振を奪った。先発した試合は7試合負けなし。白星を運ぶ強運でチームに今季4度目の4連勝を呼び込んだ。

 サインに首を振って投げたのは、フォークだった。「二刀流」に挑む大谷が見せた、新たな姿。6回、先制打を許していた李大浩を、3球続けたフォークで空振り三振に仕留めた。「振ってくれると思った。まだ落ち幅にムラがあるけど(精度を)上げていければいいです」。プロ入り初めて投じたフォークで3つの三振を奪うなど自己最多9三振。同じく最多の110球を投げ、7回途中4安打1失点で3勝目を手にした。

 “鋭いツメ”を、隠していた。すでにシーズンは107試合を消化した8月下旬だが、これまでフォークは「投球練習でほとんど投げていない」(黒木投手コーチ)球種。花巻東時代に使っていたとはいえ、コンビを組んだ大野を「(フォークを投げることを)今日知った」と驚かせるほどだ。だが、腕を抜くように投げるチェンジアップと違い、直球と同じように腕を強く振るフォークを、武器になると感じて解禁した。「高校時代よりは(握りを)浅めで。実戦では投げてなかったけど、いいきっかけになったかなと思う」とうなずいた。140キロ近い球速で落ちる高速フォークは、今後への手応えにもなった。

 全110球中、58球が変化球。直球で押すイメージを、一変させた。変化球を多投できた要因のひとつに、投球フォームの安定があった。1回は先頭の糸井に四球を与えて失点するなど「フォームがバラバラだった」と反省したが、2回以降は修正し、制球がまとまった。前回の先発登板だった先月30日以来、ブルペンでの投球練習を減らし、重点を置いてきたのがネットスロー。地道な繰り返し作業で体に染みこませてきた投球フォームを、実戦で体現できた。「崩れかけたところで、やってきたことができた。そこもすごくよかった」。変化球が制球されたことで、この日最速153キロだった直球も生きた。

 夏前のある日の練習中、バント練習用の打撃マシンが不調で、高めのボール球やワンバウンドなど、なかなかストライクがこないことがあった。中嶋兼任コーチから「オマエよりノーコンや」とキツイ冗談を飛ばされたが、「僕よりはいいと思います」と周囲の笑いを誘うユーモアで応じた。もちろん制球に課題があることは自覚していた。だがその“ギャグ”ではもう、誰も笑わないだろう。それが、成長の証しだ。

 チームは今季4度目の4連勝。大谷も先発登板試合で、6勝1分けと不敗を継続した。「カードの頭だったので、勝って勢いに乗っていくしかないと思った」。中田が骨折離脱した窮地でも、日本ハムには大谷がいる。【本間翼】

 ▼大谷が無傷の3連勝。高卒新人の開幕3連勝以上は昨年の武田(ソフトバンク=4連勝)と釜田(楽天)以来で、ドラフト制後(66年以降入団)11人目。日本ハムではドラフト制以前の62年に6連勝した尾崎に次いで2人目だ。この日はプロ入り最多9奪三振。2ケタ奪三振を記録した日本ハムの高卒新人は66年4月19日森安が最後で、あと1個取っていればチーム47年ぶりだった。