<日本ハム2-1ロッテ>◇17日◇札幌ドーム

 敵地として脅威に感じていた世界は、あたたかかった。親しみが込められた大歓声を全身に受け、お立ち台から見える景色をながめた。FAの人的補償で加入した日本ハム藤岡好明投手(29)が、移籍後初勝利を挙げた。「(お立ち台は)早く名前と顔を覚えてもらうには、いい場所。野手に感謝しています」。しみじみと、喜びをかみしめた。

 試合開始から3時間半を過ぎた延長11回が出番だった。2死からクルーズ、細谷に安打を許したが、好守にも助けられて無失点で切り抜けた。「(投手陣が)みんなでつないでくれた流れ。そう簡単に点はやれないと思った」。復帰登板の前日16日に続き、連投も難なくこなした。

 昨年の6月は、病室にいた。風邪だと思った体のだるさは、肝機能の低下が原因だった。ベッドから天井を見上げ、野球ができていたことの喜びを、痛感した。退院後も運動制限をかけられ、ユニホームはダボダボになった。それでも、1軍マウンドに帰ることだけを目指して、空白の時間を必死に取り戻してきた。前夜の試合後、メールの着信があった。「元気な姿を見られてホッとしています」。どん底にいたとき、そばで支えてくれた両親だった。2日続けて、恩返しが出来た。

 首脳陣は今後、ロングリリーフもできる貴重な戦力として起用していく方針。V奪回のために、欠かせない1ピース。上位追撃態勢が、整った。【本間翼】