<東京6大学野球:慶大4-3早大>◇最終週最終日◇30日◇神宮

 慶大が早大を振り切り、2季ぶり33度目の優勝を果たした。3回2死満塁、今秋ドラフト1位候補の伊藤隼太外野手(4年=中京大中京)が右翼線に先制の2点二塁打を放つなど一挙4点。本塁打と打点でリーグトップの伊藤は4打数2安打なら史上13人目の3冠王だったが、3打数1安打で迎えた第4、5打席目はともに四球。打率2位の4割5厘で惜しくも逃した。慶大の勝ち点5での完全優勝は92年秋以来37季ぶりで、春連覇は64年ぶり。全日本大学野球選手権(6月7日開幕、神宮ほか)には2年連続で出場する。

 3冠王には、わずかに届かなかった。それでも後悔はない。主将、そして主砲として「6大学の顔」となった伊藤は、満面の笑みで優勝インタビューに向かった。昨年までの顔だった早大・斎藤佑樹(日本ハム)の言葉を引き合いに出した。

 伊藤

 「持ってないっすね~。持ってないです。(9回に打席が回ったが)持ち切れてないです」。

 9回2死から巡った第5打席目。安打が1本出れば、約4毛差で打率1位に返り咲く。頭には入っていた。だがバットはピクリとも動かさない。カウント3ボール1ストライクから低めの直球を見送った。ボール球に手を出していた28日の1回戦とは違う。相手を自分のペースに引き込む、いつもの伊藤の打席だった。「(1回戦は)最終学年、主将と去年と違った心境で気持ちを抑えきれなかった。(9回は)1点欲しい場面だったので、四球という結果に納得している。後悔はしていない」と淡々と振り返った。

 打率4割5厘、4本塁打、17打点はすべて自己最高。試合後は必ずその日のうちに、自分の打席を映像で確認した。トップの位置とタイミング、投手との間合い。ズレを感じたときにはすぐに修正した。プロジェクターで映した他大学投手の映像を見ながらスイングするなど、予習も欠かさなかった。その姿勢には、部員の多くが追随した。江藤省三監督(69)からも「背中で引っ張っている」と全幅の信頼を受けている。「調子の波なくシーズンを全うできたけど、最後にメンタルで自分の弱さが出た。まだまだ努力していきたい」と、課題を口にした。

 満足はない。反省を糧に前進する伊藤が、今年の学生最強打者として大学選手権を迎える。【清水智彦】