ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)による防衛成功の熱が冷めやらぬうちに、同じ「聖地」米ラスベガス・ヴァージンホテルで26日(日本時間27日)、世界トップのライト級注目ファイトがセットされている。

元東洋太平洋同級王者でWBO世界同級5位の中谷正義(32=帝拳)が、元3団体統一同級王者ワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)とのノンタイトル12回戦に臨む。

昨年10月、現3団体統一同級王者テオフィモ・ロペス(米国)に判定負けし、王座陥落するまでロマチェンコは階級を超越した最強ランキング、パウンド・フォー・パウンド(PFP)上位を争う常連だった。王座陥落した現在でも米老舗専門誌ザ・リングでPFP9位に入るほど。世界ボクシング界のスーパースターの1人と言っていい。

アマチュア時代から規格外の戦績だった。オリンピック(五輪)では08年北京大会フェザー級、12年ロンドン大会ライト級で2大会連続金メダル。世界選手権も09年、11年と金メダルに輝き、アマ戦績は396勝1敗。この1度の黒星は07年の世界選手権決勝だった。米プロモート大手トップランク社と契約を結んでプロ転向。18年には世界最速となる12戦目で世界3階級制覇を成し遂げた。プロ16戦のうち15戦が世界戦という戦績から想像しても、ロマチェンコがノンタイトル戦に臨むことは珍しい。その対戦相手として中谷に白羽の矢が立った。

中谷との試合は約8カ月ぶりの再起戦となる。この間、18年にメスを入れた右肩を再手術した。欧米のボクシング界は、卓越した攻守のテクニックからハイテク、精密機械、マトリックスとも呼ばれるロマチェンコの復調ぶりに注目している。米専門メディアでは早くも中谷戦後の展開を予想。現3団体統一王者ロペスとの再戦、あるいはWBC王者デビン・ヘイニー(22=米国)に挑戦するプランを報じる。無冠にもかかわらず、常に世界ベルトに絡む話題が続くのはロマチェンコのスター性だろう。

一方、中谷は帝拳ジム移籍初戦となった昨年12月、米ラスベガスでスター候補で当時のIBF5位フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に9回TKO勝ちした。1回、4回にダウンを喫した後、9回に左ジャブでダウンを奪い返し、ワンツーで沈めたファイトは米国で高い評価を受けた。現在はライト級でWBO5位、WBA8位、WBC9位、IBF10位と4団体でトップ10入りしている。

19年7月にIBF世界ライト級王座挑戦者決定戦で判定負けした現3団体統一同級王者ロペスへのリベンジを口にする中谷にとっては世界挑戦を手にするための大チャンスと言っていい。ビッグネーム撃破で得るものは非常に大きいだけに、日本のファンにとっても興奮のカードとなる。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)