今後は「得意分野、“指相撲”の世界」に戻るのだという。タレントのボビー・オロゴン(55=ぼびバラチーム)は、沖縄アリーナのバックステージで、晴れ晴れとした表情でそう語った。

11月20日、沖縄で行われた総合格闘技(MMA)のRIZIN32大会で14年ぶりにMMA参戦。元プロレスラーでボディービルダーの北村克哉(35=チーム北村/武蔵村山さいとうクリニック)と対戦し、リアネイキッドチョーク(裸絞め)を決めて一本勝ちを収めた直後だった。

もちろん、指相撲の世界というのは冗談だが、「(MMAは)理由がなければやらない。戦いたくない」というのは、本心からの言葉だろう。参戦を決意した理由は「みそぎのため」に他ならなかった。昨年、妻の顔をたたいたとして暴行容疑で現行犯逮捕され、在宅起訴。失ったファンからの信頼を取り戻したかった。「人に指をさされないように頑張ります」とリングに上がり、勝利後は「期待を裏切らなくて良かった」と涙を流した。

芯があるから愛される。試合前会見では「白黄色はっきりさせよう」とおどけてみたり、「今回のテーマは“水着”」「世間にご迷惑をおかけした以上は、日本の文化にのっとって“三十路(みそじ)”する」等々、肝心なはずの「みそぎ」をわざと言い間違えて笑いを誘ってみたり…普段はおとぼけで注目を集めるが、ただそれだけの男ではない。

対戦相手の北村が「彼の体を見れば真面目にトレーニングしているのが分かる」と語ったように、分厚い胸板、きれいに割れたシックスパックと、鍛え抜かれた肉体は、参加選手の中でも際立っていた。今年で55歳。強靱(きょうじん)な肉体の裏には、人一倍の努力が詰まっていた。

今年10月、ランニング中に、川にいた女性を助け出した。今月12日に、埼玉県警越谷署から感謝状を送られた際は、事務所を通じ「困っている人がいれば助けるのは当たり前」と、おとこ気あふれるコメントを発表。本人は隠していたつもりらしく「なんで知ってんだよ! 恥ずかしいじゃんかよ」と、照れ笑いを浮かべた。

過去の過ちは消せないが、進むことはできる。今後、MMAのリングに上がるかどうかの明言は避けたが、人々を笑顔にするため、YouTubeやタレント活動を精力的に行っていくという。「もす(押忍)!」。そう大声で叫ぶと、胸を張って会場を後に。ボビー・オロゴンが、「みそぎの旅」への大きな1歩を踏み出した。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

北村克哉(左)を攻めるボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)
北村克哉(左)を攻めるボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)
北村克哉に勝利し、トロフィーを手に記念撮影するボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)
北村克哉に勝利し、トロフィーを手に記念撮影するボビー・オロゴン(2021年11月20日撮影)