WBO世界フライ級王者木村翔(29=青木)は27日、中国・青島で行われた2度目の防衛戦で同級4位サルダール(フィリピン)に6回KO勝利した。

 序盤から木村はボディー攻撃を徹底。執拗な攻撃に相手のサルダールが露骨に嫌がる顔を見せる。4回にはボディーからコンビネーションでダウンを奪取。6回にはKOで仕留めた。「調子はいい。いい試合になると思う」と戦前に話していた通り、日本人初の中国での防衛に成功した。

 昨年7月、中国のスター選手で同級王者だった鄒市明(ゾウ・シミン、36)を敵地で撃破し、世界を射止めた。衝撃のKO。国内での知名度はまだまだだが、中国では卓球の福原愛やサッカーの本田圭佑らに次ぐ人気者になった。試合はゴールデンで全国中継という第2のホームで、待望の勝ち名乗りを受けた。

 世界戦3試合目で初めて、トランクスなどメーカー提供を受けた。黒地に黄色のライン。初の特注シューズには、かかと外側に「雑草」の文字を入れていた。

 木村は中3で地元の埼玉・熊谷のジムに通い始めたが、高校に入るとすぐに遊びに走った。地元でバイト生活に物足りなさを感じて23歳で一念発起。上京してプロを目指した。ついに世界をつかんだが、たたき上げの雑草という気持ちを忘れないための2文字だった。しかも漢字なら中国人にも通じる。「気持ちは伝わるはず。熱い応援は心強い」と期待していた。

 昨年大晦日の初防衛を機に配送のバイトをやめて引っ越した。月5万円の5畳のアパートから、15万円で10畳の高層マンションにグレードアップ。。「1日でも長く防衛して稼ぎたい」。次戦は3階級制覇を狙う田中恒成(23=畑中)と指名試合の見込み。人気のある中国で大きな勝利を手にした。

 

 ◆木村翔(きむら・しょう)1988年(昭63)11月24日、埼玉・熊谷市生まれ。中3で競技を始め、本庄北高では1年で高校総体出場。13年4月プロデビューで1回KO負けも、その後2引き分けをはさみ負け知らず。16年11月にWBOアジア・パシフィック王座獲得。同年大晦日、王者木村翔(29=青木)が挑戦者で元世界王者の五十嵐俊幸(33=帝拳)を9回2分34秒TKOで下して初防衛を果たした。中国では福原愛に次ぐ知名度を誇る。165センチの右ファイター。家族は父と弟。