WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(25=大橋)が、元世界王者のフアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)に1回右ストレートでKO勝ちした。井上は7戦連続KO、世界戦通算KO11試合という、2つの日本新記録を樹立した。

試合開始から1分立つか立たないか、井上の左ジャブと強烈な右ストレートがワンツーで相手の顔面を捉え、いきなりのノックアウト勝ちだ。

「最高ですね。(KOした右ストレートは)手応えもすごく拳から伝わってきて、相手の倒れ方もかなり効いているなと。この一撃で終わったと思いました。WBSS初戦を最高の形でスタートきれたと思う。海外でも日本でのパフォーマンスを出すことができれば、スーパースターに近づいていけると思います」。わずか1分10秒で相手を沈めた井上が涼しげに声をはずませた。

5月25日、WBA世界バンタム級王者ジェイミー・マクドネル(英国)に1回KO勝ちしてから18日後。井上は大橋ジムで軽めのスパーリングを開始していた。「1番、短いオフだったかも」と苦笑いしつつ「もう次が決まっているから」と胸を躍らせてジムワークに入った。世界3階級制覇の余韻に浸らず、動きはじめていた。

7月20日には組み合わせ抽選会に出席するため、初めてロシア・モスクワに足を運んだ。挑戦者の第1候補に想定していた元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)が第1シードのWBAスーパー王者ライアン・バーネット(英国)に指名され、第2シードの井上はパヤノを選択。早い段階で挑戦者と対面し、雰囲気もつかんだ。

また拳を交えるであろう他団体の世界王者とも顔を合わせた。過去の世界戦とは違う異例づくめの連続だったが「(他の)日本人王者とは違うステージに来られたことは誇り。今回は相当、燃えています。気持ちもモチベーションも上がっていますね」と心を躍らせていた。

14年12月、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦以来、約4年ぶりのサウスポーとの対戦だった。「苦手意識は持っていない」と井上。8月下旬からはWBCアジア・スーパーバンタム級王者グレン・ポラス(フィリピン)を練習パートナーに招いたが、スパーリングでは井上のパンチ破壊力に相手がギブアップし、2日で帰国していた。

英大手ブックメーカーでもダントツの優勝候補となっていた。「注目度の高さは感じています。簡単な道のりではないですけれど優勝に向かって頑張りたい」と、WBSS1回戦のリングに向かっていた。

試合は異なる団体の世界王者ら8人で争うワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)同級1回戦。序盤から井上は積極的に攻め、優位に試合を進めた。切れ味鋭いパンチをし、仕上がり具合は過去最高。最後まで井上らしい攻撃的なボクシングを貫き、準決勝進出を決めた。