先天性難聴という障がいを抱えながら、昨年12月にプロレスデビューした今井礼夢(16)が、有観客の興行では2戦目となる試合に臨んだ。同団体代表でもある田村和宏(40=TAMURA)、井土徹也と組んで6人タッグマッチに出場。悪役レスラーの新井健一郎、定アキラ、ヒデ久保田組と対戦するも敗れ、初勝利はお預けとなった。

現在行っているユーチューブ配信の試合でも未勝利の今井。「とにかく勝ちたい」と先陣を切り、積極的に仕掛けていった。デビュー戦と比べ、キック、エルボーの威力がアップ。身長で劣る相手に勢いよく飛び込み、強烈なダメージを与えた。「スキルを磨いてきたことをぶつけられた」というバックドロップもきれいに決めるなど、持ち味を出したが、その後の急所攻撃でふらつき、最後は新井にジャンピングパイルドライバーからの体固めで3カウントを奪われた。

試合後のバックステージでは終始下を向き、悔しい表情。それでも田村から「負けはしたけど、初のメインの試合でここまでできたのは上出来。若さと強い気持ちは相手に勝っていた。なので自信持って。明日からだ、下向くな!」と励まされた。今井は顔を上げ「次は頑張りたい。トレーニングを重ねていけば、勝つ可能性がある」と前を向いた。

母で元SPEEDの今井絵理子参院議員(37)の姿はなかったが、プロとしての覚悟を持って戦っており、全く気にしない。母には「負けて悔しかったと伝えたい」と明かすも、来なかった理由を聞かれ「寒いからじゃないですか」と周囲を笑わせる余裕を見せた。

敗れはしたが、デビュー戦から1カ月半で、成長した姿をファンの前で披露した。今年の正月は日本プロレスの礎を築いた力道山のお墓がある池上本門寺を訪れ、必勝祈願を行った。即成就、というわけにはいかなかったが、偉大なる先輩のパワーを力に変え、これからも貪欲に勝利を追い求める。【松熊洋介】