元WBO世界フライ級王者・中谷潤人(25=M・T)が世界2階級制覇に成功した。WBO世界スーパーフライ級王座決定戦に出場し、同級1位として同級2位アンドルー・モロニー(32=オーストラリア)とベルトを懸けて争い、12回2分42秒、KO勝ちで王座獲得に成功。日本ジム所属では史上17人目の世界2階級制覇を成し遂げた。日刊スポーツ評論家の大橋ジム・大橋秀行会長(58)が圧勝劇を解説した。

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衝撃のKOシーンだった。試合終了間際の“ワンパンチKO”は世界でもめったにない。しかも、米ラスベガスでの注目の興行で全世界に配信されている。判定でも中谷の勝利だったが、結果が判定とKOでは価値がまるで違う。世界への最高のアピールになった。

中谷の最大の武器でもある長距離からの左ストレートが効果的だった。12回もこのパンチがモロニーの頭にあったのだろう。だから左ストレートと同じ打ち方で振り抜いた、最後の左ロングフックは見えていなかった。“消えるパンチ”だったから効いた。

モロニーも中谷をよく研究していた。左対策でガードを高く上げて、開始からグイグイと前に出てきた。その相手の堅いガードの合間を縫うように中谷は左右のアッパーを突き上げ、2回に先制のダウンも奪った。その対応力にも目を見張るものがある。

唯一、課題が見えたのは接近戦。フライ級では接近戦でも相手を圧倒していたが、この試合では何度かペースを奪われ、無理に打ち合って不用意にパンチを食うシーンが2、3度あった。相手がもっとパンチ力のある選手であれば、その1発が致命傷になる。そこは気を付けたい。

とはいえ中谷がこのクラスでも傑出した選手であることは疑いようもない。長身でリーチがあり、パンチも強い。12回を戦い抜くスタミナも証明した。スーパーフライ級でも彼と互角に戦える選手はいないだろう。このまま3階級、4階級を制覇する力を秘めている。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)

【WBO世界Sフライ級王座決定戦】中谷潤人が1発KO、モロニー撃破し世界2階級制覇/詳細