大相撲の貴乃花親方(45=元横綱)が、史上初めて理事解任を決議された。28日、東京・両国国技館で行われた日本相撲協会の臨時理事会で、役員待遇委員への2階級降格となる理事解任を、評議員会に諮ることが決まった。元横綱日馬富士関による弟子の貴ノ岩への暴行事件に際し、一連の対応などで責任を問われた。辞任の意思はなく、理事職を強制的に外される事態となった。それでも来年2月の役員候補選挙への出馬は可能。当選は確実で、解任の効力は小さい。来年1月4日の評議員会で正式に処分が決まる。

 <記者の目>

 「大山鳴動してネズミ一匹」という結末だったのかもしれない。問題発覚から約1カ月半、何も変わっていない気がする。貴乃花親方の理事解任も、理事返り咲きまでの実質1カ月程度。現実的には効力は薄かった。

 一連の事件で世間に衝撃を与えたのは、生々しい暴力の様子だ。貴ノ岩の頭部への医療用ホチキスによる施術後の写真に、世間が「引いた」のが分かった。元日馬富士関は引退会見で「弟弟子が礼儀と礼節がなっていなかった時にそれを正し、直して教えてあげるのが先輩の義務」と話したが、それを暴力で訴えても世間は共感しない。

 他人同士が家族のように寝食を共にする、深い絆など独特の世界観が相撲界の魅力だ。今回の事件で、暴力には重い処分が下る前例が数多くできた。何事も豪快さがウリだったはずの親方や力士が、制約だらけの状況に自ら追い込んだ。一般社会に照らし合わせれば当然の処分だが、それに気付かなければ、いくら再発防止策を講じても意味がない。「降格」などの一過性の処分より、一般社会と角界の価値観の違いを埋めることに重きを置くべきだろう。【高田文太】