1月の初場所中に引退した大相撲の元横綱稀勢の里の荒磯親方(33)が「力士の象徴」という、まげと別れを告げた。

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田子ノ浦部屋の面々も、それぞれの思いを胸に、その日を迎えた。開場2時間前、午前9時から荒磯親方は最後の大銀杏(おおいちょう)を結い始めた。床鳴への「お世話になりました」のあいさつから始まった。17歳だった04年3月の春場所4日目、初の十両土俵で初めて大銀杏を結ってくれた、ひと回り年上の床山。床鳴はあいさつに「勉強させていただきました」と返し、15年間の集大成の大銀杏に仕上げると「さびしさとホッとした気持ちの両方。どちらが大きいのか分からない」と、泣きそうな目でほほ笑んだ。

最後は長年付け人を務めた、三段目淡路海の弓取り式で締めた。淡路海は巡業で弓取り式を務めたことはあったが本場所は未経験。国技館は初体験で「巡業とは違う。今朝も横綱に『弓取りお願いします』と敬語で言われ、失敗しなくてよかった。誰にでもできる経験ではない」と感謝した。弟弟子の三段目田子ノ藤は「大銀杏のない姿を初めて見たら、こみ上げてきてしまって」と、人目を避けて1人で号泣。同部屋の誰からも愛された横綱だった。