左大胸筋負傷からの復活を目指す大関貴景勝(23=千賀ノ浦)は快勝発進で、まずは不安を拭った。

先場所千秋楽で破った西前頭筆頭隠岐の海との一番。立ち合いやや左にずれた相手を逃さず、不安視されていた左をハズに、最後は倒れ込みながら押し出し。大関としては夏場所以来3場所ぶりの白星となった。

“武士道精神”を重んじる23歳は、多くを語らない。二所ノ関一門の連合稽古が行われた2日以降は、取材にほとんど口を開かず、この日の朝稽古では報道陣の質問を遮るなど、緊張感を漂わせた。取組後の支度部屋でも無言だった。固い決意で土俵に上がり、2度目の天皇賜杯へ突っ走る覚悟のようだ。

初優勝した昨年の再現を狙う。福岡入り後に稽古を再開させた先月29日に「大関に戻ったからには、優勝は100%狙っていかないといけない」と口にした。九州は、14年に初めて序ノ口で番付に載るなど思い入れのある場所。昨年は旧貴乃花部屋から移籍した直後の場所で快挙を成し遂げた。この日の朝稽古後、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「九州はゲンがいいからね」と期待を寄せていた。順調に1歩前に出た。