1場所での十両復帰を目指したものの、6番相撲で負け越しが決まり、場所後の再十両の可能性が消えた東幕下2枚目豊ノ島(36=時津風)が、今場所最後の7番相撲に登場。幕内上位などで過去15度の対戦(11勝4敗)がある西幕下6枚目の豊響(35=境川)と対戦した。わずかに右をのぞかせたが、立ち合いから圧力負けし、その右を強烈におっつけられズルズル後退。真後ろにはたいたが、左足を踏み越し押し出しで敗れた。復活をかけた場所は2勝5敗で終わった。

何度も顔を合わせた相手との対戦を「幕内で何度も対戦があるから、ちょっと何か気負いすぎたかな、立ち合いが高かった。もうちょっと、いい相撲を取りたかった」と振り返った。場所全体を振り返り「やっぱり切れが、いろいろとね、落ちてきたなと思うし、感じますね」と素直に吐露した。

幕下陥落が決まった1月の初場所千秋楽。「自分の中では、やりきったという思いはある」と引退でほぼ固まっていた。それを翻意した裏には、一粒種の長女希歩ちゃん(7)の存在だ。幕下以下に落ち無給生活になることを、けなげにも7歳で分かっていたそうで「私が貸してあげる」と泣きながら相撲を続けることを訴えられたという。さらに、初場所では親や家族を場所に呼ぶことなく、関取の座を失った。「家族も両親も見に来させられなかった。それでいいのか、と思った」と、なえた気持ちを奮い立たせて臨んだ今場所の土俵だった。

その今場所は、家族を会場に呼び寄せようにも無観客開催。「最後の姿」を見せることは来場所以降に持ち越しだ。だが、そのことに豊ノ島本人はこだわっていない。「最後だから(家族に)見せたいということには、こだわってない。見てほしいけど、だからといって…(その理由だけで続けると決断する)ことはないし、テレビでも見てるでしょう。そんな中途半端な気持ちでは…」と話す。現状では「幕下で負け越して、なかなか気持ちを(土俵に)持っていくのは難しい。これだけ長くやって、下に下がって負け越したことで、1つの決断をする時かな、とかいろいろな思いがある。(現役を)続ける気持ちに持っていけるか…」と苦悩する胸の内を明かした。冗談っぽく「(決断は)娘との闘いかな」と少しだけ笑い「とりあえず場所は終わったので、ゆっくり進退を考えたいと思います」と、こみ上げるものを抑えるように話した。【渡辺佳彦】