大相撲11月場所(8日初日、東京・両国国技館)で約3年ぶりに関取復帰を果たした東十両13枚目宇良(28=木瀬)が“恩返し”の化粧まわしを締める。

28日、電話取材に対応。関取復帰が決まり、新たな化粧まわしが贈られることを明かした。

贈り主は福岡県行橋市の女性で、酒井佐津恵さん(88)。18年の春ごろ、酒井さんが宇良に「宇良関の相撲を見て元気をもらってます」という励ましの手紙を送ったことがきっかけだった。

酒井さんは異常たんぱく質が全身のさまざまな機器に沈着し、機能障害を起こす「アミロイドーシス」で闘病中。右膝の負傷で休場が続く宇良と、病気と闘う自身の姿を重ね合わせるように応援し始めた。18年12月に行橋市で開催された冬巡業の勧進元で「行橋未来塾」代表理事の江本満さん(49)に、酒井さんが宇良の出場を問い合わせ、江本さんが知人を介して宇良の師匠、木瀬親方(元前頭肥後ノ海)に相談。同年の九州場所後には宇良と酒井さんの対面も実現した。

当時から「(関取に)上がったら贈らせて下さい」と言われており、宇良の関取復帰が目前に迫った今年9月に化粧まわしの製作を発注した。制作費の約150万円は全て酒井さんが用意。デザインは宇良の希望で「技」という字がピンク色で大きく書かれている。

関取復帰となる11月場所は、本来の九州開催ではなく東京開催となった。対面や化粧まわし製作などに尽力した「行橋未来塾」代表理事の江本さんによると「(酒井さんは)相当残念がっていた。『九州場所に来たら会いに行きたい』と言っていたので。ただ次に会ったときには『残念だったけど来年の九州場所まで私は頑張って生きるから、江本さん一緒に九州場所に連れて行ってください。生きる活力にします』と言っていましたよ」。

酒井さんは入退院を繰り返す日々を送っており、年々入院の期間も長引いているという。11月場所で新しい化粧まわしを着用する予定の宇良は「僕の相撲で元気づけられる人がいるのは自覚するきっかけにもなるし、頑張る糧にもなる。元気に土俵に上がる姿を見ていただきたい」と意気込んだ。