大相撲秋場所(12日初日、東京・両国国技館)が初めての上位総当たりとなる西前頭3枚目の琴ノ若(23=佐渡ケ嶽)が、同学年の金メダリストから刺激を受けた。

3日、千葉・松戸市の部屋で行われた稽古後に報道陣の電話取材に応じ、先月まで開催された東京オリンピック(五輪)に言及。「同年代の活躍が増えてきた。気持ちの面で見習うことが多かった」と振り返った。

特に印象に残ったのは柔道男子66キロ級で金メダルを獲得した阿部一二三(24=パーク24)。同じ1997年度生まれで、礼節を重んじる面で相撲と柔道は通ずるものがある。阿部と面識はないが「武道の心というか、最後まで浮かれずに、自分らで言うと土俵を下りるまで気を引き締めているというのは、喜びが爆発してしまうこともあると思うので、なかなかできることではないと思う。そういう面では本当にすごいと思いました」と話した。

西前頭11枚目だった7月の名古屋場所では、自己最多の12勝3敗で敢闘賞を受賞した。祖父は元横綱琴桜、父は師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)というサラブレッド。組んで良し、離れて良しとスケールの大きい相撲で順調に番付を上げている。「上に上がるにつれて簡単に自分の形にならせてくれませんし、稽古をしていて四つだけじゃ上がっていけないなと思って、四つになるための押しだったり、逆四つでも相撲を取れるようにと頭に入れていってますね」と、柔軟な取り口を意識しているという。

秋場所は初めての上位総当たりで横綱、大関戦も初挑戦となる。「楽しみは楽しみ。自分は思いきっていくだけなので、横綱が相手だからとか、大関が相手だからとかじゃなく、出し切ることが一番重要になってくる」と地に足をつけた。

秋場所で横綱白鵬との対戦が実現すれば、親子2代での対戦。新十両で参加した19年7月の夏巡業で胸を出してもらったことは、今でも覚えている。「その時はこれが横綱なのかなと肌で感じましたし、やはり地力の差を感じたんですけど、ただ本当にありがたかったです。(巡業)初日から横綱が土俵に上がって新十両に胸を出してくれるなんてことはなかなかないと思うので」と感謝した。「親子で(白鵬と)対決できる可能性があるということで、なかなか経験できることじゃない。師匠(父)が現役の時から上で取っていて、自分が上がった時にまだ取ってるっていうのは本当すごいことだと思う。そこに向かっていけるっていうこともすごく大切だと思うので、楽しみというのがあります」と気持ちを高めた。

三役も間近で、父の最高位も徐々に視界に入ってきた。残り10日間を切った初日に向けて、この日も部屋の関取衆を相手に相撲を取って調整。「(父の番付に)早く追いつけるように、少しですけど、1つの目標が見えてきたので。そこに向かって、自分の出し切れるもの、やりきれることをやっていけばいいのかなという思いです」と心境を語った。