照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の新横綱優勝が、14日目にも決まる。関脇御嶽海を下して2敗をキープ。14日目に3敗の阿武咲、妙義龍、遠藤の平幕3人が敗れ、自身が勝てば2場所ぶり5度目の優勝が決定する。さらに、この日で初の年間最多勝が確定。史上最速タイ記録で決めた。優勝争いは4敗までが圏内となり、2敗の照ノ富士、3敗の平幕3人、4敗で平幕の隠岐の海と5人に絞られた。

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重圧のかかる結びで、照ノ富士が単独トップの座を死守した。3敗の妙義龍と阿武咲が、連続で大関を撃破して迎えた一番。負ければ3敗の平幕3人に並ばれる中で、2度の優勝経験を持つ難敵を退けた。

先手は御嶽海に奪われた。頭から当たられて上体が起きたが、左下手を命綱に何とか持ち直す。半身の体勢だったが、下手で振りながらじっくりと胸を合わせて、上手を取って体を寄せた。得意とは逆の左四つでも、出足さえ止めれば照ノ富士のペースだった。

一年を通じて見ると、モンゴル出身の先輩横綱2人に並ぶ強さを示している。13日目終了時で年間勝利数を60に乗せた。2位で43勝の正代と御嶽海が、仮に来場所まで全勝しても上回らないため、初の年間最多勝が確定。秋場所13日目で決めるのは、1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では2005年朝青龍、10年白鵬に並ぶ史上最速タイ。安定感は頭一つ抜けている。

取組後は2敗目を喫した前日12日目の明生戦と同様、リモート取材を拒んだ。前日は敗れた直後の土俵下で古傷の左膝を気にする動きを見せるなど、試練が続く。場所前には、横綱昇進にあたって後援者に感謝を伝えるとともに「膝は万全ではないけど、精いっぱい頑張ります」と伝えた。この日の勝ち名乗り後、受け取った懸賞は34本。手取りで102万円で、今場所では初めて100万円を超えた。企業を含めて周囲は、古傷や病気とも戦いながら、序二段陥落から横綱まで上り詰めた不屈の精神を今場所も期待している。

新横綱優勝を果たせば、17年春場所の稀勢の里に続く。年6場所制となった1958年以降では史上6人目となる快挙は、手の届くところまで近づいている。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山) 照ノ富士は本来は右を差したかったんでしょうけど左の下手を取った。慌てることなく上手を取るまで我慢した。精神的にも修羅場をくぐり抜けてきた。精神的に強い。(優勝争いは)横綱は(後続に)1差あるが、3敗勢にもチャンスはある。