関脇御嶽海(29=出羽海)が首位を守った。2敗対決となった平幕の阿炎を、押し出しで下して11勝目。2桁勝利で大関とりの足固めを作った今場所で、19年秋場所以来の賜杯へ、1歩近づいた。

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2敗同士の直接対決は、御嶽海の踏み込みの良さが全てでした。前日の阿武咲戦は立ち合いの当たり負けが敗因と分かっていたのでしょう。だから立ち合いの一点に集中していました。その後の阿炎の攻めは、手を伸ばすのが分かっているから下から起こすように押しています。踏み込みが良いから足もそろわない。阿炎が引かざるを得なかったのは、全て立ち合いの踏み込みでした。

今場所連敗がないのは先場所までの負のイメージを払拭(ふっしょく)して、大関に上がる上で、印象もいいでしょう。来場所は貴景勝、正代の2大関がともにかど番です。ファンが御嶽海に求めるのは強い大関、そしてその先にある日本人横綱です。その足固めを今場所、しっかりやってもらいたいですね。

14日目に当たる宝富士は兄弟子として腹をくくって照ノ富士の援護射撃に出るでしょう。想定されるのは長い相撲に持ち込むこと。苦しくなれば御嶽海が引くことも考えられます。御嶽海としては、そんな思惑もはね返して1発で持っていきたいところでしょう。3敗に後退した阿炎ですが、チャンスはあります。照ノ富士に勝てば敢闘賞に、あわよくば殊勲賞も…ぐらい欲を出して思い切り力を発揮してほしいと思います。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)