「おにぎり君」の悲願は、あと1歩のところで届かなかった。西前頭4枚目の隆の勝(27=常盤山)が平幕の佐田の海(35=境川)のすくい投げに屈し、4敗に後退した。3敗を守った横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が3場所ぶり7度目の賜杯を手にした。

トレードマークの笑顔は消え、険しい表情が広がった。隆の勝は「落ち着いて前にいきたかったけど、(得意の右を差せず)少し慌てた」と振り返った。逆に佐田の海にもろ差しを許し、土俵際で鮮やかなすくい投げを決められた。4敗に後退し「自分らしい相撲が取れなかったのが一番悔しい」と実力を発揮しきれなかった自分を責めた。

千葉県柏市出身。同県出身者としては1991年名古屋場所で平幕優勝を飾った元関脇琴富士以来の賜杯獲得を目指した。今場所では鋭い立ち合いから自慢の押し相撲を展開し、4日目から自己最長の9連勝。12目目まで単独トップに立っていた。

終盤戦にかけて、初めて加わった優勝争いの重圧がのしかかった。13日目以降は1勝2敗(●=関脇若隆景、〇=霧馬山、●=佐田の海)。「後半戦は精神的に削られる相撲になった」と正直に明かし、「緊張している中でも自分の相撲を取りきる」ことを課題に挙げた。

それでも横綱・大関総なめ(同部屋の貴景勝は対戦なし)を達成するなど快進撃を続け、混戦の夏場所を大いに盛り上げた。初の殊勲賞にも輝き「自信になる。部屋ではいつも大関(貴景勝)と稽古していますが、これまでの稽古は間違ってないと感じた」と力強く言った。既に視界は2か月後の名古屋場所に向く。心身をさらに磨きをかけ「名古屋場所でリベンジをしたい」。今後こそ、とびきりの笑顔を待ちわびるファンに届ける。【平山連】