瞬発系の相撲を取る阿武咲が、そのスピードをいかんなく発揮しています。

今場所は立ち合いで相手にずらされないように、自分のタイミングでしっかり立っています。この日も北勝富士に対し立ち合いで先手を取り、十分に腰を落とした体勢から何より休まず攻める姿勢がいい。腰の重さもありますが益荒雄さん(先代阿武松親方)の現役時代のような、スピードを身上とする相撲が阿武咲には合っています。四つ相撲も取れる阿武咲ですが、今場所は押しに徹しています。ゴムまりのような体を生かすためにも押し相撲を通した方がいいでしょう。

中学時代にライバルだった貴景勝や同世代の力士に番付で後れを取り「負けてたまるか」という気持ちもあるでしょう。ただ自分に足りないものを補ったりケガを治す時間も必要です。三役から落ちて5年になりますが、焦らず地道にやってきたから幕内上位をキープしていると思うし、決して無駄な時間ではなかったでしょう。スピード相撲の花を咲かすのはこれから。押し相撲は苦しいし後半戦はスタミナ勝負ですが、最後まで貫いてほしいです。

最後に豊昇龍について期待すればこその苦言になりますが、引っ張り込むような相撲は大けがにつながりかねません。大関候補の役者がそろい、その1番手の豊昇龍には横着な相撲は取らないでほしいです。(日刊スポーツ評論家)