大関経験者で西十両12枚目の朝乃山(28=高砂)が、東十両13枚目の湘南乃海(24=高田川)を寄り切りで退けて11勝目を挙げた。前日の11日目に初日から続いていた連勝が10でストップしたが、黒星を引きずることなく、白星を積み上げた。十両優勝へ、残り3番。「しっかり自分の相撲を取りきって、良い結果で終わりたいです」と誓った。

湘南乃海に得意の右は封じられても、左四つから下手で振って体を入れ替えて反撃。すかさず頭を密着させ、しっかり腰を下ろしながら圧力をかけて土俵外へ寄り切った。「どっしりと構えたことが良かった」。連敗はしない。この一番にかける気持ちの強さが見えた。

前日に初日から続いていた連勝がストップ。「自分の気持ちが沈んでいました」と翌日以降の影響も心配される中で、師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)と母の石橋佳美さんの言葉で切り替えた。同親方には「左上手を取らないとダメだね」とアドバイスをもらい、母からは電話で激励を受けた。「今までは父から叱咤激励をもらっていました。今は亡くなって母が父の分と一緒に送ってもらって、大変うれしいです。母からは『切り替えて、1日一番という気持ちで頑張ってね』という言葉をもらいました」。周囲の支えへの感謝を、白星という形で届けた。

8日目に豪ノ山(武隈)を撃破し、十両復帰場所で初日から負けなしの8連勝。大関だった20年7月場所以来となる3度目のストレート給金を達成した。十両で勝ち越すのは17年7月の名古屋場所以来、約5年半ぶり。さらに9日目に北の若(八角)、10日目に東白龍(玉ノ井)を下し、負けなしの10連勝としていたが、11日目に大翔鵬(追手風)に敗れ、初黒星を喫していた。

「15日間相撲を取れることへの感謝を忘れない」との気持ちを持ちながら土俵に上がり、新しい顔ぶれがひしめく十両でも大関経験者としての実力を見せつけている。全勝または1敗での優勝なら十両1場所通過、来場所での幕内の可能性も十分ある。いまだ手にしていない十両優勝へ、白星を積み重ねる。