大相撲で大関経験者の小結正代(31=時津風)が、夏場所(14日初日、東京・両国国技館)に向けて、心身ともに状態上向きをアピールした。

5日、都内の部屋で稽古し、十両時疾風、幕下吉井を相手に13番取って10勝3敗。土俵際まで寄られても、左からのすくい投げで逆転したり、豪快に突き倒したりと、力強い内容の相撲を披露した。先場所は西前頭筆頭で10勝5敗の好成績。「ケガも治って体が動くようになっている」と、先場所に続き、状態の良さを感じている。

昨年11月の九州場所は、かど番で6勝9敗に終わり、大関から陥落した。10勝すれば大関に復帰できた1月の初場所も6勝9敗。「自分らしさがなかった」と振り返る。大関を務めた2年間を振り返って「勝ちにこだわりすぎていた。前に出るのが怖かった。前に出て、かわされるんじゃないかと思っていた。でも、かわされたとしても、前に出ればよかったと今は思う。ずっと後悔していた」と、しみじみと語った。

「誰でも経験できるものではないので、大関を経験したのはよかった。今は肩の荷が下りた」と、本音を漏らし、ほほ笑んだ。重圧は大きく、特にかど番の場所などは「場所が来るのが、おっくうだった」と、本音が止まらなかった。

一方で先場所は前頭筆頭で10勝、今場所も2桁白星を挙げれば、7月の名古屋場所には再び、大関昇進のチャンスがやってくるかもしれない。「そういうチャンスがあれば食らいついていきたい。前回よりは、気持ちの整理もできている」。失うものがなくなった31歳は、心身ともに充実の一途。慣例に従えば夏場所は、出場力士の中で番付最上位と、初日に対戦する可能性が高いのが正代だ。相手が横綱照ノ富士になるのか、大関貴景勝になるのか。初日で大物食いを果たせば、勢いに乗って優勝争いに名乗りを上げるかもしれない。