相撲のうまさが光った豊昇龍の給金相撲でした。

当たって攻めの姿勢を見せた豊昇龍ですが、平戸海は昔で言えば、もろ差しの名人と言われた逆鉾さんのような、差し身のうまい四つ相撲も取れる力士で案の定、もろ差しを許しました。差したらかいなを返し、切り返して出る。これが基本ですが、平戸海はいい体勢になりながら怖がって腰が引けていました。この体勢を瞬時に察知して、掛け投げに行ける、と判断して早い動きが取れるのが、豊昇龍のうまさ、勘の良さです。この一瞬の判断をした時は、いわば捨て身の投げでした。しかし、腰が引けた状態の平戸海は逆に足を掛けて投げを打ち返すことが出来ません。そんな状況もあって、足をうまく絡ませながら徐々に足をはね上げ、慌てずに勝負を決めました。捨て身が捨て身ではなくなって危なげない投げになりました。

立ち合いも相手によっていろいろ変えられる。変化も出来る。良く言えば相撲がうまい、悪い言い方をすれば相撲がずるい。大関に上がるには必要なことで、今の豊昇龍にはこれがあります。3場所通算では大栄翔と29勝で並んでいますが、総合的に考えると豊昇龍が今、大関に一番近いでしょう。(日刊スポーツ評論家)