今年1月の初場所中に引退した元関脇隠岐の海の君ケ浜親方(38=八角)が、最後の取組、断髪式を行った。

最後の取組では同じ島根・隠岐の島町出身の弟弟子、三段目隠岐の富士を相手に、隠岐古典相撲形式で行われた。2番取る取組の前後には、土俵周りから大量の塩がまかれ、2人は頭や体が塩で真っ白になる中で取組を行った。珍しい光景に、観衆も大いに盛り上がった。

断髪式では歌手の松山千春ら300人がハサミを入れ、師匠で日本相撲協会理事長の八角親方(元横綱北勝海)の止めバサミで、まげに別れを告げた。05年初場所の初土俵から18年間の現役生活で、幕内は75場所務め、殊勲賞1回、敢闘賞1回、金星4個。島根県出身力士としては、121年ぶりに三役に昇進したことでも話題になっていた。

母八重子さん(74)は、現在も出身の隠岐の島町で美容師として活躍しているだけに、幼少から散髪してもらうのは、もっぱら母だった。断髪後に美容師に整髪され「誰かに髪を切ってもらうのは新鮮ですね」と笑った。また「父親の時は、きましたね」と、涙こそ見せなかったが、父多喜夫さん(73)がハサミを入れた場面は、こみ上げるものがあったという。

「(来場者が)隠岐の島の文化に触れていただけたなら、よかった。18年間は振り返ると長かった。でも、ここからですね。全国の人に応援してもらえる力士を隠岐から出したい。応援していただくというのは、簡単で難しいこと。頑張ります」と、八角部屋の部屋付き親方として、後進の指導だけではなく、スカウト活動にも力を入れていくつもりだ。