大関貴景勝(27=常盤山)の3度目の優勝に始まり、霧島と豊昇龍の大関昇進など、今年も大相撲はさまざまな出来事が起きた。今年の全6場所で幕内を務めた、30人の力士を対象とした年末恒例の「第12回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。全5回連載の第1回は、ともに懸賞に関連した「大枚逃したで賞」の貴景勝と「一獲千金賞」の横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)&関脇琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)。いずれも今年の土俵を沸かせた上位陣が受賞した。

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今年1年で貴景勝が取り逃した懸賞は、手取りで総額2058万円にものぼった。自身の取組にかけられたものの、敗れて獲得できなかった懸賞は686本。今年は優勝と綱とりが2場所ずつなど、貴景勝への期待と注目度の高さを示す結果でもあった。優勝した初場所が125年ぶりの「1横綱1大関」という異例の番付。それが3場所続いた上、うち2場所で照ノ富士が休場。貴景勝は春場所7日目に途中休場するまで、懸賞が多い結びの一番を連日務めたことも「大枚逃したで賞」となった要因だ。

一番あたり100万円以上となる、懸賞34本以上の“大一番”の取組数も、年間で貴景勝が19番と最多だった。ただし19番の内訳は11勝(1404万円)8敗(1125万円)で収支にするとプラス279万円。昨年は“大一番”を4戦全勝とし「一獲千金賞」に輝いたが、今年は“大一番”の勝率が、年間で4位の5割7分9厘にとどまった。

貴景勝に代わって「一獲千金賞」を獲得したのは、ともに“大一番”の勝率が10割だった照ノ富士と琴ノ若だ。照ノ富士は7番、琴ノ若は一番あって無敗。照ノ富士は限定的ながら、この7番の取組時間と獲得した懸賞額から換算すると、驚異の「時給3億4678万円」となる。最多は5月夏場所千秋楽の貴景勝戦で60本、180万円の懸賞がかけられていた。また勝負強さでは、年間唯一の“大一番”を制した琴ノ若もさることながら、3位の翔猿も4勝1敗で勝率8割と大健闘した。【高田文太】