大相撲元幕内北青鵬の暴力問題による宮城野部屋の処遇は、ようやく決着が付いた。しかし、今なお疑問が残る。

師匠を務める宮城野親方(元横綱白鵬)の対応に監督責任が問われて2階級降格や減俸を受けたにもかかわらず、さらに同親方や力士ら所属する全員が伊勢ケ浜部屋へ転籍。時期は未定ながら部屋再興の可能性もあるが、事実上の当面閉鎖という厳しい状況に追い込まれた。力士たちの将来を案じるなら、部屋を存続する形も考慮に入れても良かったのではないか。

たしかに、宮城野親方は現役時代から土俵上でトラブルが相次いだことは否定できない。引退時に親方になるに当たっても、協会の規則を守ることや逸脱した言動を行わないなどの誓約書に署名した経緯もある。だからこそ、後輩力士への日常的な暴力行為が判明した北青鵬に対する監督責任が問われ、過去の事例と比べても重い処分に至ったのは理解できる。

ただ、何もここまでする必要があったのか。委員から年寄への2階級降格と3カ月の20%報酬減額とする処分には妥当と感じたが、さらに春場所は師匠を外され、大島部屋の部屋付きの玉垣親方(元小結智乃花)が師匠代行を務めることになった。所属する伊勢ケ浜一門と日本相撲協会執行部の動向を取材していても、当面の閉鎖は避けられない状況だと感じた。

周囲からは「宮城野親方がよく反省して、2階級降格から再出発する形だけではいけなかったのか」という意見のほか、複数の若手親方から「力士たちがかわいそう」「あすはわが身」といった同情を寄せる声も出ていた。方針が決定される前の段階から、オンライン署名サイトでは相撲ファンたちによる宮城野部屋閉鎖に反対する署名運動が展開されるなど注目度が高かった。

28日の理事会後に対応に当たった佐渡ケ嶽広報部長(元関脇琴ノ若)は「今後の宮城野親方と力士にとってベストな方法を執行部と一門とで段階を踏んで話し合ってきた」と語った上で、「何度も制裁を加えているわけでもない」ときっぱりと言った。方針の決定に1カ月以上がかかって、行きついた選択。果たして正しかったのかと、今なお答えが出ない。【大相撲担当 平山連】