デトロイトに住む女性がスリルに富んだ「フロリダ旅行」をツイッターに投稿した。その148のツイートが話題になり、裏付けを取ったローリングストーン誌が記事にした。
「Zola ゾラ」(26日公開)はその記事を原作にしたSNS時代ならでは映画だ。
ウエートレスの黒人女性ゾラ(テイラー・ペイジ)はポールダンスの腕前を生かしてストリッパーとしても稼いでいる。
ある日、勤務先のレストランにやってきたシングルマザーの白人女性ステファニー(ライリー・キーオ)と話すうちに相通じるものを感じ、「大金が稼げる」との誘いに乗って週末にフロリダのクラブで踊ることにする。
マネジャーのように振る舞う黒人男性Xといかにも頼りないステファニーの恋人、白人男性のデレクが同行。気軽に思えた旅には、しだいに不穏な空気が漂い始める。
Xの正体はポン引き。自立しているように見えたステファニーは、彼の言いなりに体を売っていた。成り行きでホテルのスイートルームでステファニーとともに客待ちすることになったゾラは、機転を利かせて自分の体を守るが、ステファニーの「代金」があまりに安いことを知り、SNSを効果的に使って、桁違いの収入をもたらす。
このことを知ったXは、ゾラをビジネスパートナーにしたいと言い出して…。
サンダンス映画祭などで高い評価を得てきたジャニクザ・ブラボー監督は、投稿動画を意識したアップの多いアングルで、事実は小説より奇なりを地で行く展開に説得力を持たせる。
女優2人はなかなかの巧者で、グレーなビジネスに手を染める女性たちの息づかいが伝わってくる。撮影前に身分を隠してストリップクラブで踊ったというペイジのポールダンスも様になっている。よく動く目で機知に富んだこのキャラを見事に演じている。
エルヴィス・プレスリーの孫というより、もはや演技派と言っていいキーオの「抜けた感じ」もいい。よく見れば目に祖父の面影があるからだろうか。どうしようもなくだらしないこのキャラにも不思議な魅力が漂っている。
誰も守ってくれない黒人女性の「サバイバル・ツアー」に、現代米国社会のリアルを垣間見る気がする。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)