1999年に第1弾が公開され、社会現象を巻き起こした「マトリックス」シリーズの18年ぶりとなる最新作「マトリックス レザレクションズ」が、日本で一足先に公開されて話題になっていますが、この作品で人気を不動のものとした主演のキアヌ・リーブスは、大スターながら庶民的で“良い人”伝説がいくつもあることで知られています。

リーブスといえば、今から11年前の2010年にニューヨークの公園のベンチで一人さみしく座ってサンドイッチを食べる姿がパパラッチされ、哀愁漂う姿が「サッド・キアヌ(悲しいキアヌ)」と呼ばれ、日本でも「ぼっちキアヌ」として話題になりました。リーブスはこの件に関して、先日出演したテレビ番組で「ただサンドイッチを食べていただけだよ。考え事をしていたんだ。お腹も減っていたし」と笑い飛ばしていましたが、1999年に恋人のジェニファーさんが妊娠8か月で流産し、それから間もなくして交通事故で帰らぬ人となってしまう悲運に見舞われていたことなどから、ファンはどことなく悲しげに見えたのかもしれません。

そんなリーブスは大金を稼ぎながらもお金には無頓着で、自らは着飾ることがない一方で、仕事仲間には高価な贈り物を気前よくすることで知られています。ガムテープでぐるぐる巻きにして補強したボロボロの靴を履いて歩く姿がパパラッチされたこともあるほど質素で、時に本人だと気づかれないこともあるといいます。また、ホームレスと一緒に道端に座ってお酒を飲んだり、たばこを吸ったりする姿が目撃されたこともあり、誰に対しても分け隔てなく気さくに接する姿に感銘を受けたファンも少なくありません。「マトリックス」最新作を記念し、これまで伝えられているリーブスの良い人伝説を振り返ってみました。

◆サンドラ・ブロックにシャンパンをお届け

出世作となった「スピード」(1994年)や「イルマーレ」(2006年)で共演しているブロックが先月、共演後にプライベートでも交流していたリーブスに「シャンパンとトリュフを試したことがない」と話した後、自宅に届けてくれたことを明かしました。バイクに乗ったリーブスが、シャンパンとトリュフに花束を手にふらっと現れ、「試してみたいかと思って」と話すと、自身はそのまま約束があると立ち去ったエピソードを披露していましたが、残念ながら2人は恋愛関係には至らなかったものの気遣いと優しさにメロメロになったようです。

共演した映画「イルマーレ」のPRで来日したキアヌ・リーブス(左)とサンドラ・ブロック(06年)
共演した映画「イルマーレ」のPRで来日したキアヌ・リーブス(左)とサンドラ・ブロック(06年)

◆「マトリックス」のスタントマンにハーレーをプレゼント

同シリーズで主人公ネオを演じているリーブスは、3部作で一緒に仕事をしたスタントチーム12人全員にハーレー・ダビッドソンのバイクをプレゼント。さらに、あるスタッフが家族の問題で困窮していることを知ると、クリスマスボーナスとして2万ドルを送って個人的に支援したといいます。また、2作目と3作目で稼いだとされる1億ドルから7500万ドルをスペシャルエフェクトや衣装、小道具のスタッフに分配したとも伝えられています。他にも撮影が終了したばかりの「ジョン・ウィック4」のスタントマン4人には、「THE JOHN WICK FIVE(ジョン・ウィックの5人組)」の文字とそれぞれの名前、そして「THANK YOU KEANU」とお礼のメッセージが刻印されたお揃いの高級腕時計ロレックスをプレゼントしています。

◆人知れず小児病院に多額の寄付

10代半ばで白血病となり、闘病生活を続ける妹を支えてきたリーブスは、2000年代初めに個人的にひっそりと子供の専門病院やがん治療の研究を支援するための慈善団体を設立し、これまで長きにわたって多額の寄付をしています。09年のインタビューで、自分の名前を冠にするのは好きじゃないと語り、リーブスの名前を出さずに小児がんの子供たちの支援を続けてきたことが伝えられています。

◆女性ファンとの記念撮影では絶対に体に触れない

プレミアやイベントなどで集まったファンと気軽に記念撮影することで知られるリーブスですが、撮影された写真をよくよく見ると女性ファンとの自撮りでは常に体に触れないように立っていることがうかがえます。SNSでも話題になっており、不快な思いをさせないようリーブスならではの気遣いがここにもあるようです。

◆豪邸は持たず、地下鉄で移動

大スターとなった後も豪邸を構えることなく、デビューから18年近くトレーラーやホテルで暮らしており、「ホームレス・スター」と呼ばれた時期があったことで知られています。03年にようやく595万ドルで妹と暮らす家をハリウッドに構えたリーブスですが、長年にわたってハリウッドの伝説のホテルとして知られるシャトーマーモント・ホテルで暮らしていたといわれています。そんなリーブスは、高級車も持たずに移動は大好きなバイクがもっぱら。また、普通に地下鉄に乗って移動することも多く、荷物を持つ女性に席を譲ってあげる姿などが目撃されたことも。

◆飛行機の緊急着陸でも冷静に人助け

19年に搭乗したロサンゼルスに向かう飛行機がトラブルで途中の町に緊急着陸するハプニングに遭遇した際も、同乗していたファンと記念撮影に応じるなど良い人ぶりを発揮。そればかりか、目的地までの代わりの移動手段の手配などを率先して手伝い、さらに他の乗客と一緒に自らもそのバスに乗り込み、スマートフォンで音楽をかけて乗客たちをリラックスさせるサービスまでしたことが伝えられています。

◆他の役者を雇うため自身のギャラを削る

「ディアボロス/悪魔の扉」(1997年)で名優アル・パチーノをキャスティングできるよう自身のギャラの削減を申し出たとことは有名で、いかにお金に執着していないかが分かる例によく挙げられています。また、「リプレイスメント」(2000年)でも、ジーン・ハックマンを雇うためにも自らのギャラを減らしたといわれています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)