宝塚音楽学校、左奥には宝塚大劇場
宝塚音楽学校、左奥には宝塚大劇場

タカラジェンヌを養成する「宝塚音楽学校」の生徒の間で暗黙のルールとして継承されてきた伝統的な作法が廃止されたことが話題を呼んでいます。

宝塚音楽学校は2年制で、2年生は「本科生」、1年生は「予科生」と呼ばれ、高い倍率を勝ち抜いた1学年40人の少数精鋭です。その予科生には、<1>先輩が普段利用する阪急電車に向かって礼をする<2>遠くの先輩には大声であいさつする<3>先輩への返事は「はい」か「いいえ」に限定する<4>ルール違反した予科生が先輩に謝る時、ほかの予科生も違反を自主申告して一緒に謝る<5>先輩の前では眉間にしわをよせて口角を下げる「予科顔」をする、などのルールがあったという。しかし、今やハラスメントに厳しい時代とあって、学校側も、時代遅れなルールは時間をかけて撤廃していくとしています。

それ以外にも、学校内の廊下は直角に曲がる、廊下は壁に沿って一列に歩くなどの決まりがあり、生徒が「すみれ寮」で送る共同生活の中でも、電子レンジは「チン」がなる前に開けないといけない、階段の上り下りでは音をたててはいけないなど、先輩に対して過大に配慮したルールがあったという。また、阪急電車に乗る時も、必ず一番後ろの車両に乗る、電車内では着席しないなどの決めごともあった。

今回のルール廃止について、現役の生徒から伝統を肯定する意見もあったが、話し合いの結果、廃止に同意したという。また、宝塚OGの中でも、廃止に賛成する人、伝統が失われることに寂しさを感じる人など、さまざまだった。

数十年前に卒業した宝塚OGに話を聞くと、昔から、この種の暗黙のルールはあったが、今ほど厳しくはなかったという。「時代によって、ルールも変わったと思います。その時の先輩、本科生たちの考え方も反映された部分もあって、厳しい先輩たちなら厳しく、優しい先輩たちならルールも緩くなるという傾向にあったと思います」という。

このほか、宝塚の生徒たちを支えるファンクラブの間で受け継がれるルールなど、宝塚ならではの不思議な伝統はまだ健在です。ファンクラブは50ほどあると言われ、宝塚歌劇を上演中の東京宝塚劇場の横を通った時、何十人もの集団が「出待ち」をしている光景を見た人も多いでしょう。ファンクラブの「ルール」については、また次の機会に。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)