18日に春風亭昇太、柳家喬太郎を見てきました。落語界きっての人気者の2人ですが、見たのは落語会ではなく、2人が俳優として出演したラッパ屋公演「はなしづか」(23日まで、新宿・紀伊国屋ホール)です。演劇好きで、自らも舞台出演している2人ですが、もともとラッパ屋のファンだったこともあって、そろっての出演となりました。
「はなしづか」は、真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった昭和16年12月の2カ月前に、当時の落語家たちが「時局にふさわしくない落語」として遊郭などが出てくる「明烏」「居残佐平次」など53の落語を「禁演落語」として自粛し、浅草の本法寺に台本や扇子などを奉納した実話をもとにした物語です。
そこで演じるのは、昇太は晴々亭昇介、喬太郎は渋柿亭喬次という落語家です。ラサール石井も世渡亭伊吉という落語家役で共演しています。貧乏長屋に住む3人の役柄は、実際のキャラクターが反映されていて、イキイキと演じているように見えました。落語をめぐってぶつかり合うこともある3人ですが、本法寺に建立された「はなし塚」に納める53の禁演落語が読み上げられる場面では、3人ともに悔しさで涙を見せます。舞台では柳家花緑の声で53の落語名が読み上げられますが、どうしてこれらの噺が「禁演」となるのか。「時局」という圧力の理不尽さがストレートに伝わってくる場面です。
戦後、「禁演落語復活祭」が行われ、自粛が解かれますが、今度はGHQによって、仇討ものの「花見の仇討」「巌流島」など27の落語が禁じられました。ただ、これは2年後に解禁となりました。
昇太が会長を務める落語芸術協会では、そういう体験を忘れないことを目的に「はなし塚」での法要を行い、8月の浅草演芸ホール下席で「禁演落語の会」を開催しています。今回の舞台にちょっと刺激されて、久しぶりに「禁演落語の会」に行ってみようかなと思っています。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




