実際の事案をほうふつとさせながらも、エンターテインメントがきっちり立っている。新聞社もしくは記者を描く作品にある、ネタを取る、裏を取る、締め切り間際の攻防…、ハラハラしながら見た。

政権の疑惑を追及する記者と、内閣情報調査室の若手官僚を、シム・ウンギョンと松坂桃李のダブル主演で描いた。大学の新設計画にまつわる文書がリークされたことから動きだす物語。現役の新聞記者によるノンフィクションが原案で、森友・加計学園疑惑や、そのほか実際にあった事案をモデルに構成されている。

これはあの疑惑か…なんて思いながら見ていたが、途中からはシムと松坂の静かな熱演に引き込まれっぱなしだった。吉岡記者を演じるシムの、相手を射るまなざしが強い。権力側でもがく若手官僚を演じる松坂も、虚無や正義感で揺れる感情を丁寧に表現している。気持ちを説明するせりふを極力削った分、繊細な表情で見る者にいろいろな想像を促している。

田中哲司が「これまでで一番の悪人だった」と言う内閣参事官の悪いやつぶりも見もの。スマホの着信画面に出た名前にビビり、最後のせりふにぞっとした。【小林千穂】

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