日本ではどことなく敷居が高いミュージカル。その概念を崩すべく矢口史靖監督が本気で挑んだミュージカルコメディー作品。

設定からして秀逸だ。幼少期のトラウマからミュージカルが嫌いになった三吉彩花(23)演じる鈴木静香が、音楽を聞くと勝手に踊り出してしまう催眠術にかかることから物語は始まる。日常生活に支障をきたすのは想像に難くないが、その様子が本格的ミュージカルとして描かれている。ミュージカルに敷居の高さを感じる日本人と静香の姿が重なって見える。

幼少期からダンスをしていた三吉だが、撮影に向けて2カ月に及ぶレッスンで準備した。モデルとしてのスタイルの良さと長い手足がスクリーンで映える。音楽に反応して踊り終わった後、我に返った時の「やっちゃった感」の表情が愛くるしい。

日本映画でここまでミュージカルをフィーチャーした作品はあまりない。加えてそこにとどまらず、人としての成長が描かれている点も見逃せない。笑いが随所にちりばめられ、見終わってハッピーになれる。名優宝田明のおちゃめさにも注目して欲しい。

【川田和博】

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